おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『まんまこと』 畠中恵 妖怪が出なくても面白い

      2016/02/05

最近読んだ本027

『まんまこと』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

畠中恵(作家別索引

文春文庫  2010年3月

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

江戸時代の裁判官・町名主の息子の物語。真実を明らかにするだけではまとまらない話を、すっきりさしてくれるのが嬉しいです。また、主人公と幼馴染みの女性との切ない話が、物語全体に筋を通しているのもいいです。

 

あらすじ

江戸は神田、玄関で揉めごとの裁定をする町名主の跡取りに生まれた麻之助。このお気楽ものが、町の難問奇問に立ち向かう。ある日、女好きの悪友・清十郎が「念者のふりをしてくれ」と言ってきた。嫁入り前の娘にできた子供の父親にされそうだという。本当の父親は一体誰なのか!?人気シリーズ、待望の文庫化。

 

 

主人公は町名主の息子

例えば金の貸し借りや住人同士の揉め事など、奉行所に届けるまでもない案件は、町を預かる名主が屋敷の玄関先で調停をした。(P22)

今で言えば裁判官か調停委員といったところである、町名主。その息子がこの物語の主人公・麻之助です。自ら首を突っ込んだり、巻き込まれたりした揉め事を、父親の代理で麻之助がすっきりと調停するのがこの物語の流れです。

 

 

お気楽主人公

主人公の麻之助は

十六になったとき、麻之助は突然変わってしまった。それまでの生真面目で勤勉なところを、どこぞに落として無くしてしまったらしい。

麻之助は大層″お気楽な″若者に化けてしまったのだ。(P8)

といった感じ。町名主の息子といえば、いい所の坊ちゃんといえるはずだが、なぜか賭場の元締めと顔なじみだったりします。あまつさえ、その元締め相手に大暴れの喧嘩をします。

 

けれど、″お気楽″といわれ、怪しげな場所にも出入りしている麻之助だからこそ、ただ単に真実を解き明かしただけでは、解決しないような揉め事もすっきりとまとめられます。そんなところは、同じ畠中恵さんの『しゃばけ』シリーズの人の良い若旦那とは一味違うところかもしれません。

 

そして、この物語の最大の醍醐味は麻之助がこじれた揉め事を、思わぬ方法ですっきりとさしてくれる気持ちのよさにあるといえます。

 

物語の中の話を一つ。ある妻を亡くして独り身の質屋の主人がいました。そこに娘と名乗る女が現れました。主人は娘を受け入れ、二人は仲むつまじく親子として暮らしていくかと思われました。しかし、主人の親戚が金目当ての娘は偽者だと訴えます。

 

そこで麻之助の出番です。麻之助は二人が仲良く暮らすことに内心賛成ですが、町名主として二人が親子ではないという真実を突き止めてしまいます。真実を伝えれば二人は不幸になってしまいます。

 

こういった、ジレンマを毎回麻之助がすっきり解決してくれるので、読んでいて気持ちがいいです。

 

 

幼馴染の女性

この物語は、麻之助が揉め事をすっきり解決する短編がいくつかまとまった、連作短編集といえます。ただ、各々の短編を貫く物語があります。それが、麻之助と幼馴染の女性・お由有との話です。

 

お由有は麻之助の親友、清十郎の父親の後妻です。しかし、二人の間には何かいわくがありそうな様子。物語が進むうちに明かされる二人の因縁がとても切なく、この作品の最後のシーンはなんだかたまらない気持ちになってしまいました。

 

この二人の話があるおかげで、単なる人情物の連作短編集に終わらず、深みが出ていると思います。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

畠中恵さんといえば何といっても『しゃばけ』シリーズですが、『まんまこと』も読み味は異なりますが同じくらい面白いです。続編を追いかける価値は十分にあるってことで星四つです。

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆☆ , ,