『今夜は眠れない』 宮部みゆき シニカルミステリーアワー
最近読んだ本026
『今夜は眠れない』(文庫)
おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明)
宮部みゆき(作家別索引)
中公文庫 1998年11月
ミステリー 青春(ジャンル別索引)
おすすめポイントを百文字で
重厚さはないですが無駄のないストーリーとトリックを気軽に楽しめる話で、少しシニカルな中学生の視点で書いてあるのも面白いです。とっちらかった話と伏線がラスト1/
あらすじ
サッカー少年の僕と両親、平凡なはずの一家に突如暗雲が。「
放浪の相場師」と呼ばれた男が、母さんに五億円を遺贈したのだ。 お隣さんや同級生の態度が変わり、 見知らぬ人からの嫌がらせが殺到、 男と母さんの関係を疑う父さんは家出―― 相場師はなぜ母さんに大金を遺したのか? 壊れかけた家族の絆を取り戻すため、 僕は親友で将棋部のエースの島崎と、真相究明に乗り出した……。 古川タクの描き下ろしパラパラマンガも収録。(作品紹介より)
シニカルな中学生
物語は主人公の僕の母親が、「放浪の相場師」から5億円の遺贈を受けることから始まります。
隣人や同級生の態度が変わり、父親は相場師と母親の関係を疑い始めます。メディアに追われ嫌がらせの電話が殺到します。そんな様子を主人公の中学生の視点で描くこの物語ですが、中学生がちょっとシニカルなのがいい感じです。例えば
「親のうろたえるさまを見たくないんだ。僕、まだ子供だから」(P18)
だけど子供が無垢であると限らないし、無垢であるとことが最善であるとも限らないじゃない?往々にして、大人はこれに気づかないけど。(P172)
ちょっと重くなりがちな話も中学生のシニカルな語り口で暗くなりすぎないのが面白いです。
ただ、その分宮部みゆきさんらしい(と私は思う)重厚さにはかけますが、気軽に読める物語です。
ラスト1/ 5で一変
物語の4/
まったく予想してない展開に驚かされている隙に、トリックは暴かれ伏線が次々と回収されあれよあれよという間に物語はまとめられます。ただ、この過程がとても心地よく、ラストも気持ちよく納得できます。
僕と相棒の島崎が活躍する続編があるようなので、次も読んでみようと思わされるラストでした。
書評的な読書感想文のまとめ
中学生が主人公のためか、登場人物の心情の奥深くまで踏み込んだ重厚さはないと思います。その分、気軽に読めるのがいいところだと思います。ただ、ラストでしっかり驚かしててくれるのはさすがに宮部みゆきさんと思いました。
個人的なイメージになりますが、宮部みゆきさんはもっと社会性のあるテーマを、登場人物の内面を深くえぐってくる作品が多い気がします。そういった意味で、やや軽めなこの作品はイメージにはずれている部分もあるので星三つです。
私が呼んだのは中公文庫版です。今、新品で手に入るのは角川文庫版です。
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