おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ジウⅠ警視庁特殊犯捜査係【SIT】』 誉田哲也 シルクのような文章

      2016/01/31

最近読んだ本023

『ジウⅠ警視庁特殊犯捜査係【SIT】』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

誉田哲也(作家別索引

中公文庫 2008年12月

サスペンス 警察(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

正反対の個性の女性主人公の対比や、警察という男社会での意地の張り合いの描写がいい感じです。抜群の読みやすさが物語にスピード感を出してくれ、無国籍の謎の少年が緊張感と次回作への期待感を与えてくれます。

 

 

あらすじ

都内の住宅地で人質篭城事件が発生した。所轄署や機動隊とともに警視庁捜査一課特殊犯捜査係が出動し、門倉美咲巡査は差し入れ役として犯人のもとへ向かうが――!?篭城事件と未解決の児童誘拐事件を結ぶ少年、その背後で蠢動する巨大な事件とは?ハイスピード、未會有のスケールで描く新・警察小説。(作品紹介より)

 

 

ふたりの女主人公

この作品は基本的に二人の女性警察官の視点が交互に入れ替わりながら物語が進行します。一人は素人の私からしてもちょっと甘ちゃんかなと思うほど、犯人に共感してしまう門倉美咲。

 

もう一人は柔道とレスリングの強者で、自分にも犯人にもストイックな伊崎基子。犯人逮捕の現場ではより危険な役割を求める、見方によっては破滅的な性格です。自分にも同僚にも厳しい過ぎるため警察の中でも少し浮いてます。

 

二人は物語の冒頭こそ同じ部署にいますが、あるきっかけでそれぞれ別の部署に異動します。まったく正反対の個性の二人はそれぞれの立場で一つの事件に関わることになりますが、この対照的な二人の主人公が、どういった形で交わるのか、分かり会うことはあるのか、これが一つのテーマです。

 

私は伊崎基子のほうが気に入っているというか、気になりますね。破滅的と紹介しましたが、以前紹介した『死ぬことと見つけたり』に出てくる、死人のような女性です。

まずはこちらが心を捨てることだ。自分流にいえば、心と体を切り離すのだ。心があるから恐怖が生じる。心がなければ恐怖は存在し得ない。(P108)

彼女の行き着く先が気になります。

 

 

男達は争う

警視庁刑事部に所属する第一特殊犯捜査(SIT)と警備部に所属する特殊急襲部隊(SAT)の現場の取り合いや、刑事たちの意地の張り合いが、ちょっと滑稽に描写されているのがいい感じです。

 

女性主人公ふたりが我が道を行くタイプなので、主導権争いをしている男どもが滑稽に映ります(いい味出している男性陣も出てきますが)。男女の対比も一つの見所です。

 

 

抜群の読みやすさ

以前紹介した同じ誉田哲也さんの作品『ヒトリシズカ』でも書きましたが、とにかく抜群に読みやすい文章です。理解しにくい文章が無く、内容を理解するために止まったり、読み返したりすることがないです。その感触は滑らかなシルクのようです。反対に、文章のザラッとした感触を楽しむ森見登美彦さんは麻といったところでしょうか。

 

この読みやすさのおかげで終盤の緊張感のある戦闘シーンではスピード感が出ています。

 

 

謎の少年

作中で起きる誘拐事件のキーマンになっている無国籍の謎の少年。彼の存在が物語に不気味な緊張感をあたえてくれます。『ヒトリシズカ』のときにも感じましたが、作者の誉田さんの特徴は読みやすさと謎めいた登場人物の書き方の上手さといえます。

 

タイトルのナンバーでわかりますが、この作品は続編があります。この少年の得体の知れなさを解明するためにも(「ジウⅠ」では解明しないとばらしてしまいましたが)続編も読みたいと思います。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ 

それなりのボリュームの話ですが、抜群の読みやすさもあり、あっいう間に読んでしまいました。主人公ふたりの関係や謎の少年が気になるので、Ⅱ、Ⅲと読んでみたいと思います。評価は最後まで読んでからのほうがいいと思ったのですが、次の巻に期待をこめての星四つ。

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