おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『駆込寺蔭始末』 隆慶一郎 殺すか殺さないかは顔で決めます

   

最近読んだ本022

『駆込寺蔭始末』(文庫) おすすめ度☆☆

隆慶一郎(作者別索引) 徳間文庫(ブログで使っている画像等は全て光文社版です。) 2000年4月

 

 

おすすめポイントを百文字で

縁切寺で有名な東慶寺の用心棒が主人公の連作短編集。一見、弱者を救う勧善懲悪ものに見えますが、主人公の行動の動機は正義と関係ないのが私は好みです。江戸時代の社会的なゆがみをえぐっているのも、面白いです。

 

 

あらすじ

鎌倉・松ヶ岡東慶寺。駆込寺として高名なこの寺の門前にせんべい屋がある。旅籠も兼ねているその店の主は木曾谷の忍び、八兵衛とおかつの夫婦。そしてもう一人、麿と呼ばれる公家の若君が居候している。実はこの麿、東慶寺の住持である高辻前中納言息女・玉渕尼の許嫁であった。不運にも住持にされた玉渕尼を守るため、用心棒として住みついたのだ。わけありの女たちが今日もまた駆込んできた……。

 

 

殺すか殺さないか顔で決めます。

寺の石段に草履一つでも投げ込めば、駆込んだことになる。駆込んだ女は、神君家康公のお墨付きのある寺に保護されて、娑婆の男にはどうにも出来なくなる。それが縁切寺で有名な東慶寺です。江戸時代、自ら離婚する権利のない女性は、東慶寺に駆込むことで男の手から逃れようとしました。

 

主人公の「麿」はもとは京都の朝廷を陰で守る忍者の集団の頭領。元許婚の玉渕尼が無理やり東慶寺の住持(寺の責任者)にさせられたことから、東慶寺の用心棒になります。

 

玉渕尼は寺に駆込んできた女が抱える問題の解決を「麿」に依頼します。東慶寺が社会的弱者である女性を救う寺なので、「麿」は結果的には社会的に力のある悪人を懲らしめることになります。ただ、「麿」の行動の動機は玉渕尼の心の平安のみにあります。

 

変に社会正義を振りかざさないで玉渕尼の心を傷付けたから殺す。やっていることが気に入らないが、最後は悪人の顔を見て殺すかどうか決める。型破りだけど、本人なりに筋を通している感じは、前に紹介した隆慶一郎さんの『死ぬことと見つけたり』通じるものがあって個人的には好みです。

 

 

江戸時代のゆがみ

「それにお前はあたしの女房だ。義理の仲でもお父つぁんに罪をきせるよなことをしたら、逆にお前の方が罰を受けるんだよ」(P47)

義父の悪事をばらそうとした女に旦那が言ったセリフです。親の権威がとても強い江戸時代の法律だと、悪事働いている親を訴えると、もちろんその親は罰せられますが、同時に親を落としめた子供も罰せられます。

 

こういった、ゆがみというか矛盾に絡めとられた女性を「麿」が救います(動機は玉渕尼のためですが)。(なんどもいいますが)殺すか殺さないかを顔つきで決めたりもしますが、法律や理屈では解決できないことをばっさり切ってくれるので、結構スカッとします。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ 

今好きな作家で打線を組んでみたで八番にはいる隆慶一郎さんの作品で、短編で読みやすく主人公のキャラクターも結構好きなのですが、ちょっと男女のどぎつい表現があったりして、おすすめ度は星二つ止まりです。

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