おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『サマータイム』 佐藤多佳子 音楽を聴きながら読む本

   

最近読んだ本021

『サマータイム』(文庫) おすすめ度☆☆☆

佐藤多佳子(作者別索引) 新潮文庫 2003年9月

 

 

おすすめポイントを百文字で

一人の少年を軸にした、勝ち気でわがままな姉の恋と、素直な弟の友情の対比が面白いです。初恋の甘酸っぱさや夏の日の思い出が上手く表現されています。暑い日にラムネを飲んだような、さわやかな後味の作品です。

 

 

あらすじ

佳奈が十二で、ぼくが十一だった夏。どしゃ降りの雨のプール、じたばたもがくような、不思議な泳ぎをする彼に、ぼくは出会った。左腕と父親を失った代わりに、大人びた雰囲気を身につけた彼。そして、ぼくと佳奈。たがいに感電する、不思議な図形。友情じゃなく、もっと特別ななにか。ひりひりして、でも眩しい、あの夏。他者という世界を、素手で発見する一瞬のきらめき。鮮烈なデビュー作。(作品紹介より)

 

 

『サマータイム』

映像化された『一瞬の風になれ』『しゃべれどもしゃべれども 』などで有名な佐藤多佳子さんのデビュー作です。表題作の他に登場人物は同じですが、それぞれ別の年代の短編が3つあります。

 

『サマータイム』は佳奈とぼくの姉弟と左腕を失った少年・広一の出会いの物語。ぼくは広一と友達になり、佳奈は広一に恋をした。夏休みの終わりに友情と恋愛が始まる、うきうき感や甘酸っぱいさ、夏休みが終わる物悲しさが上手に表現されていて懐かしい気持ちになりました。

 

勝気でわがままな姉の不器用な恋はちょっと応援したくなりますが、姉に広一を取られてちょっと嫉妬しているぼくのほうに私は感情移入しました。

 

題名の『サマータイム』はジャズの曲名から来ているので、youtubeで「summer time」を聴いたのですが予想以上に切ない曲でした。曲を聴きながら小説を読めばたぶん泣けます。

 

 

『五月の道しるべ』

他の短編からも一つ紹介します。『五月の道しるべ』は『サマータイム』の数年前の話。わがままな性格の佳奈は小学一年生ですでにわがままで、弟を振り回しているのがちょっとほほえましかったりする作品です。

 

ある日、佳奈は道の脇につつじが咲き乱れる生垣を見つけます。そのつつじで道しるべを作ろうとたくさん花を摘んでしまいます。子供らしい無邪気さで。ただ、ふとしたきっかけで、生きたつつじ花を摘み取って殺してしまったことに気づいてしまいます。

 

自分の残酷さに気がついて怯える佳奈がかわいらしいのと同時に、ちょっとだけ成長した瞬間が描かれていて個人的には気に入っています。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ 

童話大賞受賞作だけあって文体も内容もすっきりさわやかな作品です。あっさりしすぎて、ちょっと物足りないなって言う部分もありますが、これはこれで楽しめるってことで星三つです。

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