おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『野ざらし忍法帖』 山田風太郎 発想力が果てしない

   

最近読んだ本020

『野ざらし忍法帖』(文庫) おすすめ度☆☆☆☆

山田風太郎(作者別索引) 講談社文庫 1999年9月

 

 

おすすめポイントを百文字で

忍者を主人公にした短編集。奇想天外な忍法もすごいのですが、その忍法の使い方のアイディアがただ事ではないです。毎回結末に驚かされつつも、ちょっと切なくなったりもします。ちょいグロ、ちょいエロです。

 

 

あらすじ

駆落ちした美男・隼人は、出世のため、美人妻お圭を、醜男の忍者枯葉塔九郎に売ってしまう。三年後、二人を偶然見た隼人は、お圭に欲望するが、彼女の股間には……。人の心のありようを描いた「忍者枯葉塔九郎」他、立場が人を変えるさまを活写した「忍者服部半蔵」など、生と死を見据えた異色9短編を収録。(作品紹介より)

 

 

忍法をメインにすえた短編集

以前紹介した『甲賀忍法帖』の作者で「今好きに作家で打線を組んでみた」で八番打者の山田風太郎さんの短編集です。長編の『甲賀忍法帖』は甲賀と伊賀の複雑に絡み合う人間の愛憎劇でしたが、短編の今回の作品は、奇抜な忍法をメインにすえて、ストーリー自体はシンプルにしてあります。ただ、シンプルなストーリーの中にも人間の悲哀がこめられていたりもします。

 

今回は九つ短編の中からお気に入りのふたつをネタバレに注意しながら紹介します。

 

 

忍者枯葉塔九郎

あらすじでも紹介している、枯葉塔九郎。彼の忍法は体を刀で切られても血の一滴も出ず、バラバラになっても死なないことです。また、バラバラになった体をつなぎ合わせると、元通りに戻るというもの。

 

まあ、忍法というか、マンガとかでありがちな特殊能力としてはよくある能力です。けれどこの忍法の使い方が秀逸です。

 

あらすじにあるように塔九郎は出世に眼がくらんだ隼人から、美人妻お圭を金で買います。三年後、たまたま出会った隼人にお圭を奪われます。そこで使ったのがこの忍法。予想もしない方法で隼人からお圭を守ります。

 

特殊な能力を題材にしたマンガや小説は多いのですが、ここまで能力の使い方がただ事ではない作品は山田風太郎さん以外いないと思います。

 

 

忍者帷子万助

主人公・万助の忍法は「枯葉だたみ」といいます。これはからだの水分という水分を外に出し、赤ん坊よりも小さなミイラのようなものになり、到底普通の人間では入れないような花瓶などの狭い空間に潜んで、諜報活動をする術です。

 

この術を使って許婚を牢から救い出さなければいけなくなります。万助ひとりであれば術を使ってどうにでもなりますが、許婚とふたりで牢から脱出するのは不可能なのは明らかです。

 

この話、奇抜な忍法でまず驚かされます(驚き度6/10)。そして、この忍法を使って許婚を救い出す方法に驚かされます(驚き度10/10)。そして、結末でもう一度驚かされます(驚き度8/10)。

 

驚き度は私の勝手な指標です。許婚を救い出すところまでで、物語としては成立していますし、十二分に面白いです。ただ、最後の最後でさらに驚きを用意してあります。ここでは男性の女性に対する根源的な恐怖みたいなものも表現されていて、驚くと共に妙に納得してしまいました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ 

ちょっとえらそうな言いかたになりますが、すべてのバトルマンガ家は山田風太郎さんの作品を読むべきです。奇抜なアイディアを考えて終わりでなく、それを生かすアイディアをさらに考える必要があります。それを分からせてくれるのがこの作品ってことで星四つです。

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