おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『木暮荘物語』 三浦しをん 木暮さんのようなじじいになりたい

      2016/01/29

最近読んだ本019

『木暮荘物語』(文庫) おすすめ度☆☆☆

三浦しをん(作者別索引) 祥伝社文庫 2014年10月

 

 

おすすめポイントを百文字で

古いアパートの住人たちを主人公にした連作短編小説。セックスがしたい老人や覗きを止められない若者など滑稽だったり、悲しかったり、身につまされる性の話。性の話なのにカラッと楽しめるのがすごいところです。

 

あらすじ

小田急(おだきゅう)線の急行通過駅・世田谷代田(せたがやだいた)から徒歩5分、築ウン十年、全六室のぼろアパート木暮荘(こぐれそう)。そこでは老大家木暮(こぐれ)と女子大生の光子(みつこ)、サラリーマンの神崎(かんざき)に花屋の店員繭(まゆ)の4人が、平穏な日々を送っていた。だが、一旦愛を求めた時、それぞれが抱える懊悩(おうのう)が痛烈な悲しみとなって滲(にじ)み出す。それを和 (やわ)らげ癒(いや)すのは、安普請(やす ぶしん)ゆえに繋(つな)がりはじめる隣人たちのぬくもりだった……。(作品紹介より)

 

 

「ありそうでない」と「なさそうである」の狭間

前に紹介したの『まほろ駅前多田便利軒』の時も思いましたが、三浦しをんさんは、「ありそうでない」と「なさそうである」の狭間の話が上手いですね。『まほろ駅前』の行天や、この作品に出てくる並木という人物なんかがそうなのかなって思います。

 

並木は彼女を何年もほったらかして外国に行っていたのに、ふらっと帰ってきたら彼女に新しくできた彼氏と三人で同居しちゃいます。普通に考えたらちょっとダメというかあり得ないんだけど、なぜかすんなり受け入れて話を読み進めてしまいます。

 

逆にセックスしたい老人はそんなことあるのかなって思いましたが、高齢者専門の風俗も実在するし需要があるのでしょう。

 

こんな感じて、リアルとある種のファンタジーの狭間で上手く物語を書くのが三浦さんの特徴だと思います。

 

 

心の叫び

並木と彼女と今の彼氏の同居の話。旦那の入れたコーヒーの味がとある理由で泥の味になってしまった、主婦の話。下の階の女子大生の部屋を覗くのをやめられないサラリーマンの話。どれも設定だけを見るとちょっとばかばかしい話のようですが、読み進めるうちに登場人物たちの心の叫びが聞こえてきます。

 

個人的に身につまされたのはセックスしたい老人・木暮の話。木暮は古くからの友人がもう長くはないと知り、見舞いに行きました。そこで友人が言った「かあちゃんにセックスを断られた。」言葉をきっかけに、燃えるようにセックスがしたいと思い始めました。

 

木暮は誰を相手にどうやって持ち込むか、思い悩みます。風俗?金で買った女とセックスをしてもうれしくない。

断られても衝撃を受けず、しかし必ず受け入れてくれると確信を持てる女性。つまり、妻ほどなじんだ身近な存在ではなく、だができれば、金銭の授受や立場の不均衡が発生しない女性が望ましい。そういうひとこそ、木暮の求める相手だった。

そんな都合のいい相手など、いるわけない。(P60)

木暮老人はこう考えます。36歳独身の私にも「そんな都合のいい相手など、いるわけない。」

 

さまざまな現実と葛藤の上、木暮老人は高齢者専門の風俗で「おしゃべりコース九十分」を選びます。

 

このおしゃべりコースという選択が老人の欲望とプライドの葛藤が垣間見えて、ちょっと切なくなってしまいます。木暮老人は目的を果たせたのか、そもそも彼が求めていたのはセックスだったのか、それは作品を読んで確かめてください。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ 

性をテーマに登場人物の心の叫びを描いているこの作品ですが、カラッと楽しめるのが三浦しをんさんのすごいところだと思います。セックスだ、のぞきだといってますがまったく下品でもないです。ただ、私の中で三浦しをんさんのハードルが上がってしまっているのでこの作品は星三つです。

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