おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ザ・万歩計』 万城目学 篤史 My Love

      2016/01/28

最近読んだ本018

『ザ・万歩計』(文庫) おすすめ度☆☆☆

万城目学(作者別索引) 文春文庫 2010年7月

 

 

おすすめポイントを百文字で

鴨川ホルモーの万城目学さんの初エッセイ。同じようなものを見ても、面白い小説を書く人は感じ方が違うなと思わされます。笑えるし、切れ味のある話もあるエッセイ集です。いくつかある海外旅行記が特に秀逸です。

 

 

あらすじ

少年時代に大阪で阿呆の薫陶を受け、大学時代に自分探しの旅先で全財産を失い、はては作家目指して単身東京へ。ホルモーでついに無職を脱するも「御器齧り(ごきかぶり)」に苛(さいな)まれ、噛みまくるラジオに執筆を阻まれ、謎の名曲を夢想する日常は相変わらず。そのすべてを飄々と綴った初エッセイ集。文庫版あとがき「その後の万歩計」を収録。(作品紹介より)

 

 

渡辺篤史推しの原点

この作品は前に紹介した万城目学さんのエッセイ『ザ・万遊記よりも、前に出したエッセイ集です。

『ザ・万遊記』で「渡辺篤史の建もの探訪」を見た感想を書く連載エッセイがあるのを紹介しましたが、ここには渡辺篤史推しの原点とも言うべきエッセイが載ってます。

タイトルは「篤史  My  Love」。内容は渡辺篤史さんの番組内での秀逸なコメントを茶化す一歩手前で、褒めてます。いや、茶化してるかも。

因みにこのエッセイの締めは、

ひょっとして私、褒めすぎか。(P127)

です。

このエッセイがきっかけで、「建もの探訪」を定点観測する、世にもマニアックな連載エッセイが誕生したそうです。

 

 

血中阿呆濃度

 中学生とは、世の中で、最も血中阿呆濃度の高い生き物だと思う。何ごとに対しても、大いに怒り、大いに笑い、大いにめそめそし、大いに妄想を働かせる。少しでも多くの光を、その小さな掌にかき集めようとするが、それらを吸収しきれぬまま、ところ構わず乱反射させる。他人の迷惑など、お構いなし。大人が眩しがる顔を見せたら、それこそグッジョブ。貪欲にして、軽薄。活発にして、怠惰。 傲慢にして、小心。純粋にして、極悪。まったく、厄介極まりない。(P109)

どういう物の見方をすれば、こんな表現が出てくるのでしょう。でも、こう言われると、この通りだと思います。

血中阿呆濃度が最も高い時期の万城目学さんはどんなんだったかは、読んで確かめてください。

 

 

 モンゴル人になりたい

どこまでも馬鹿な話であるが、私は将来、モンゴル人になりたいと思っていた。

幼少のみぎりではない。選挙権を得て、れっきとした成人になってからのことである。(P210)

という書き出しで始まる、「遥かなるモンゴル」というエッセイがあります。学生時代にモンゴルのトナカイの遊牧を生業とする少数民族のもとに滞在した時のことをまとめたものです。

 

これ以外にも学生時代に海外に行った時のことをまとめたエッセイがどれも面白いです。前回の「ザ・万遊記」での北朝鮮訪問記もそうですが、万城目さんは海外旅行記はどれも面白く切れ味があります。

 

「遥かなるモンゴル」の面白い部分については読んで確かめてもらうとして(トナカイの餌付けの方法とか腹を抱えて笑ってしまいました)、切れ味の部分を少し。

 

万城目さん、当たり前ですがモンゴル人になるのはあきらめたそうです。なぜなら生活力の差を痛感したからです。

 

少しだけ古い時代の生活に戻り、私はようやく理解した。

非力な者も、病気がちな者も、動物を扱うことが苦手な者も、農作業が苦手な者も、個体間に現れる偏差を最小限に抑え、誰でもとりあえずはそこそこの生活水準を保ち、そこそこの余暇を得ることができるよう、我々のご先祖はせっせと現在の社会を構築してきたのだ。そのご先祖様の成果を否定し、自分探しだ何だとうつつを抜かす私は、何というたわけ者か。(P223)

笑わすだけではないです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ 

とりあえず「渡辺篤史の建もの探訪」はまだ見ていないので、早く見ようとは思います。けど、土曜日朝五時はハードル高いです。

 

出版順では『ザ・万歩計』→『ザ・万遊記』ですが、読んだ順番は逆だったためか、今回の『ザ・万歩計』ははじけっぷりが『ザ・万遊記』程ではなかったてことで、星三つです。

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