おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ヒトリシズカ』 誉田哲也 読ませる力がすごい

      2016/01/28

最近読んだ本016

『ヒトリシズカ』(文庫) おすすめ度☆☆☆

誉田哲也(作者別索引) 双葉文庫 2012年4月

 

 

おすすめポイントを百文字で

事の真相に近付いてるはずなのに、底無し沼にでも引きずりこまれているかのような不安感を感じる作品です。けれども、一度読み始めたら止めることのできない、読み手を放さない力がすごいです。

 

 

あらすじ

本書は、あなたに新しい興奮をもたらす。それは、第一章「闇一重」で幕を開ける。男が拳銃で撃たれて死亡する。犯人逮捕が間近となった矢先、司法解剖をした法医学者から連絡が入る。心臓に達していた銃弾は、一度止まってからまた動いたというのだ――。第二章「蛍蜘蛛」で驚愕、第四章「罪時雨」で唖然、最終章「独静加」で……何を見る?(作品紹介より)

 

 

膨らむ不安感

物語は六つの章をそれぞれ別の人間の視点で進みます。読み進めれば進むほど、各章で起きる事件の背後に見え隠れする「真相」に遠ざかる感じがして、不安感をあおられます。その理由の一つとして主人公の心情がほぼかかれていないことにあるのではないかと思います。

 

主人公の心情を表している数少ない部分で印象に残っているセリフを紹介します。

「……あたしは暴力を、否定も、肯定も、しない。ただ、利用はする。あたしなりのやり方で、暴力をコントロールする」(P213)

このセリフを言っているのは女性です。私が男性だからかもしれませんが、暴力は自分で「使う」ものだし「コントロールなんでできない」もので、加害者になるか被害者になるかの二択でした。なので、暴力を「利用」し「コントロール」する、この考え方は新鮮で印象に残りました。

 

 

読み手を放さない力

真相に近づけそうで近づけない不安感があったり、若干グロテスクな描写なんかもあったりしますが、私はこの物語を一気に読んでしまいました。「ストレスなくすいすい読める」読みやすさは作者の作者の誉田さんもこだわっているそうで、そのためショッキングな内容でも文章としてはすいすい読めました。

 

たとえば、森見登美彦さんなどは文章としては読みにくい部類でしょう。これはこれで森見さんの味であり強みなので、悪い事ではないのですが。

 

誉田さんの文章としての読みやすさが、読者を途中で手放さない力になっていると思います。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ 

個人的な見解ですが(まあ、このブログがすべて個人的な見解ですけど)最終章のあっさり具合がいまいち不満です。その前の章までに積み上げられた得体の知れなさが、最終章では見られないからです。不安感の底なし沼を抜けたら、案外お花畑でしたという感じです。個人的には不安感の底なし沼を抜けたら、もっとすごい地獄でも待ち受けてほしかったですね。上で紹介したセリフのように「暴力をコントロール」し尽くすとか。

 

ただ、う~ん、救いがなさ過ぎるので、今回くらいのあっさりラストの方がいいのかもって、この文章書きながら思ってもいます。そんなこんなで、ラストの解釈は読んで考えてみてくださいってことで星三つです。

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