おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ラブコメ今昔』 有川浩 ヘビーなライトノベル?

      2016/01/25

最近読んだ本012

『ラブコメ今昔』(文庫) おすすめ度☆☆☆

有川浩(作者別索引) 角川文庫 2012年6月    

おすすめポイントを百文字で

自衛隊員が主役の単なるラブコメと思いきや、結構ヘビーな話をぶっこんできます。重い話をエンタメに仕上げるのはさすが有川さん。取材で得られたであろう自衛隊員の結婚観は、さすがにうならされます。

 

 

あらすじ

「自衛隊員の皆さんに恋愛や結婚の経験談を語ってもらいたいんです」。二等陸佐・今村和久の前に現れたのは、隊内紙の記者の元気娘・矢部千尋二等陸尉。訊けば、夫婦の馴れ初めを、コラムに掲載したいというのだが!?「みっともない」と逃げる今村、ねばる千尋。一歩もひかない攻防戦の顛末は――!?様々な思いが交錯する、自衛隊員の結婚を綴った表題作を含む、十人十色の恋模様6編を収録した、国を守る男女の本気印恋愛百景。(作品紹介より)

 

 

 

単なるラブコメと思いきや

基本的にはわりと甘々な恋愛物の短編集です。『図書館戦争』を書いた有川浩さんらしいエンターテイメントと作品です。けれど、自衛隊員の恋愛なのでそこには必ず「死」というものが意識させられます。 作中で結婚式の上官の挨拶の定番が出てきます。

「いついかなるときに、いかなる事態に陥るか分からないのが我々自衛官です。いざというときにお互い悔いを残さないためにも、ケンカは翌日に持ち越さない。これだけは上官として自衛官として、なにとぞよろしくお願いします。」(P259)

物語というかエンターテイメントとして引き込まれる話の中に、上のようなエピソードがポンと入ってくるので考えさせられます。こういったエピソードが入る前までに、物語に感情移入させられているのでなおさらです。

 

個人的に一番どきりとしたエピソードは自衛官同士の結婚について作中のあるベテラン自衛官が語ったシーンです。ネタバレになるので詳しくはかけませんが、かなり辛辣で否定的な意見です。一連のセリフの最後にベテラン自衛官はこういいます。

「有事を架空の想定にするのはやめなさい。」(P52)

このセリフが短編集全体の裏テーマといえるかもしれません。

 

 

ありがちな戦争映画に対する皮肉?

個人的に刺さったエピソードをもうひとつ。自衛隊で映画の撮影協力をする話の中で、国籍不明の潜水艦を自衛隊の艦が追いかけるシーンでのこと。テレビ局側はリアリティーを出すため自衛隊員が怯える演出を入れようとしますが、自衛隊関係者や自衛隊に詳しい原作者は反対します。

 

実際に似たようなシーンで出動したことがある自衛隊員は怯える演出で思わず笑ってしまいます。ここで印象的なセリフが

「それに皆さんだって困るでしょう、自分たちの安全を預けてる人間がいざ有事のときに怯えて腹が据わらないようじゃ」(P154)

考えさせられるし、ありがちな映画に対してすごい皮肉な気がします。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

単なるラブコメではなく、作者の取材で裏打ちされた自衛隊の実情も楽しめる作品ってことで星三つ

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