おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『風立ちぬ・美しい村』 堀辰雄 絵が浮かぶかも

      2016/01/18

最近読んだ本007

『風立ちぬ・美しい村』(文庫) おすすめ度☆☆☆

堀辰雄(作家別索引) 新潮文庫 1951年1月

 

 

おすすめポイントを百文字で

リズム感のある長文から描き出される風景が美しいです。『美しい村』は淡い色の油絵、『風立ちぬ』はモノクロの写真をイメージしました。戦前に書かれた上に独特の長文ですが、慣れてしまえばスムーズに読めました。

 

 

あらすじ

風のように去ってゆく時の流れの裡に、人間の実体を捉えた『風立ちぬ』は、生きることよりは死ぬことの意味を問い、同時に死を越えて生きることの意味をも問うている。バッハの遁走曲に思いついたという『美しい村』は、軽井沢でひとり暮らしをしながら物語を構想中の若い小説家の見聞と、彼が出会った少女の面影を、音楽的に構成した傑作。ともに、堀辰雄の中期を代表する作品である。(作品紹介より)

 

 

一文が長い

或る小高い丘(おか)の頂きにあるお天狗(てんぐ)様のところまで登ってみようと思って、私は、去年の落葉ですっかり地肌じはだ(じはだ)の見えないほど埋まっているやや急な山径(やまみち)をガサガサと音させながら上がっていったが、だんだんその落葉の量が増して行って、私の靴( くつ )がその中に気味悪いくらい深く入るようになり、腐った葉の湿り気け(しめりけ)がその靴のなかまで滲(し)み込んで来そうに思えたので、私はよっぽどそのまま引き返そうかと思った時分になって、雑木林(ぞうきばやし)の中からその見棄(みす)てられた家が不意に私の目の前に立ち現れたのであった。(P16)

これで一文です。長いですね。長い上に「、」がわりと多いです。国語の授業でこの文章を書いたら、間違いなくダメ出しされるでしょうね。

 

けど、「、」のおかげで、リズム感が出るので慣れてくると結構心地好く読めました。戦前に書かれた文章ですし、現代に書かれた本に比べて読みにくいのは確かですが。

 

 

浮かび上がる軽井沢の風景

『美しい村』は主人公が軽井沢で片想いの女性との別れの傷心を癒しながら過ごしていると、後の婚約者になる少女に出会うという話です。 上で書いたようなリズム感のある長文で軽井沢の風景を描写されると、風景が絵画のように頭に浮かびました。淡い色合いの油絵の中に薔薇やツツジの鮮やかな色が印象的に感じました。

 

『風たちぬ』は、『美しい村』に出てきた少女と婚約するも、その少女が結核にかかりサナトリウムに入院するのに、主人公が付き添う話です。 サナトリウムのイメージに引っ張られた感じもありますが、モノクロ、もしくはセピア色の写真が浮かびました。色合いも動きもないサナトリウムで、婚約者と二人で死を見つめる物語といえます。こちらは風景よりも二人のやり取りで印象的なセリフが多いです。

「あなたはいつか自然なんぞが本当に美しいと思えるのは死んで行こうとる者の眼にだけだと仰ったことがあるでしょう。……」(P126)

婚約者の少女の死期が近いことは、お互いに口には出さないが悟っている時のセリフです。グッときます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

美しい風景の中に浮かび上がる、主人公とヒロインのやり取りが感動的なこの作品。 個人的には慣れてしまえばリズムが心地好いのですが、独特の長文が人によって好みが分かれると思うので、おすすめ度としては星3つです。

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