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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『悪人』 吉田修一 悪人は誰なのか?

      2017/03/19

書評的な読書感想文004

『悪人 上・下』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

吉田修一(作家別索引

朝日文庫  2009年11月

サスペンス 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

彼は悪人なのか?誰が悪人なのか?彼は悪人ではないんじゃないか?悪人は他にもいるけど、彼は悪人である必要があるかもしれない。なんて考えさせられるのも、作者の手のひらの上なんだろうな。    

 

 

あらすじ

九州地方に珍しく雪が降った夜、土木作業員の清水祐一は、携帯サイトで知り合った女性を殺害してしまう。母親に捨てられ、幼くして祖父母に引き取られた。ヘルス嬢を真剣に好きになり、祖父母の手伝いに明け暮れる日々。そんな彼を殺人に走らせたものとは、一体何か??。(上巻作品紹介より)

 

 

彼は悪人なのか?

タイトルがタイトルなので主人公の殺人犯の祐一が悪人か?と考えながら読み進めることになります。けれど、祐一や被害者周辺の人間関係が明らかにされると、祐一の朴訥な性格と被害者やその周辺人物の派手な性格の対比で、否が応でも祐一に感情移入させられます。

 

そして、殺害状況などが明るみに出るころにはひとつの疑問が浮かびます。「彼は悪人なのか?」

 

 

誰が悪人なのか?

次に考えるのは、誰が悪人なのか?ということ。被害者や被害者周辺の人物、また祐一の祖母の周りの人物など悪人と呼べそうな人が現れます。こいつらが悪人だろうと思いそうになります。生理的にというか、心情的にというか、そういった観点で祐一以外の人物の悪人ぶりが際立ってきます。

 

けれど、被害者の両親の視点が祐一の殺人の事実を強烈に明示します。結局「誰が悪人なのか?」

 

 

彼は悪人ではないんじゃないか?

主人公は徐々に追い詰められ、終盤である人物と逃避行します。そのころには、主人公の祐一を悪人と思えなくなってしまいます。「八日目の蝉」のときもその傾向があったのですが、主人公が犯罪者の作品を読むと、どうしても主人公に感情移入をしてしまい、主人公の罪を責めれなくなってしまいます。

 

今回も祐一が殺人を犯したという事実は理解していますが(被害者の両親がちょこちょこ出ることで、忘れなれないようになっています)、祐一が悪人とは思えなくなってしまいました。

 

「彼は悪人ではないんじゃないか?」 物語も9割以上進んだあたりで私はこう思いました。

 

 

書評的読書感想文のまとめ

9割以上進んで考えた結論は最後にひっくり返ります。 「悪人は他にもいるけど、彼は悪人である必要があるかもしれない」これが私が考えた結論です。 けれど、この結論は年齢や性別や立場によってだいぶ変わってくるのかなとも思います。その辺は、ご自分で確かめるといいかもしれません。

 

ちなみに、今回の見出しの書き方は、小説の章のタイトルをまねてみました。読み終わって、心の天秤が右へ左へ傾いて、こんな風に考えさせられることも作者の手のひらの上なんだろうなということで、星四つです。

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