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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『八日目の蝉』 角田光代 この構成はずるいなぁ

      2017/03/19

書評的な読書感想文002

『八日目の蝉』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

角田光代(作家別索引

中央公論  2011年1月

サスペンス 家族(ジャンル別索引

 

 

 

おすすめポイントを百文字で

緊迫した状況を淡々と述べている前半で、主人公の誘拐犯にものすごく感情移入させられます。しかし、後半では主人公が変わり、異なった視点から物語が進みます。感情がついていけません。この構成はずるい!

 

 

あらすじ

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか……。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。第二回中央公論文芸受賞 (作品紹介より)

 

 

 どっぷり感情移入してしまう前半

物語の前半は、不倫相手の夫婦に生まれた赤ちゃん(ちなみに女の子)を誘拐した女が主人公です。誘拐犯と赤ちゃんの逃避行の様子が描かれています。

 

あちこちに逃げる様子や潜伏先での日常が日付とともに書かれていて、緊迫した状況も割りと淡々と書かれているのにどんどん誘拐犯にシンクロしてしまいます。逃避行も初めは落ち着かずにあちこち逃げ回りますが、だんだん一ヵ所に長くいれるようになると、日常生活の描写も増え、その頃には赤ちゃんがハイハイしたなど成長とかもあり、どっぷりと感情移入してしまいます。

 

前半の最後のほうでは母と娘のようにくらし、娘は近所の子供たちと遊びまわったりします。そんな何気ないシーンでぐっと来てしまうのは完全に主人公視点にシンクロしてしまったからだと思います。

 

私はそこそこのおっさんで独身子供なしなので、自分の子ではないとはいえ赤ちゃんの母親という主人公とは、共通点がまったくありません。それなのに感情移入させられたのは作者の表現のうまさで、後半の話を考えると完全に作者の思う壺にはまりました。

 

 

 感情がゆさぶられる後半

後半の物語は事件から十数年後、誘拐された娘の視点で進みます。

 

後半に関しては詳しくプロットを語ってしますとネタバレになるのでふわふわした言い方にとどめますが、前半で主人公に感情移入していた私は、ここでがっつりカウンターを食らいました。ちょっとだけプロットを語りますが、娘の本当の両親が余りいい親として描かれてないこともあり、ただへこまされるというよりは心が右へ左へぐらんぐらんとゆさぶられます。

 

前半は主人公に感情移入するという一定方向に向けた感情の動きでしたが、後半は右へ左へとふたつの方向に感情が振られます。この構成はずるいと思います(いい意味で)。そして、物語の最後には解釈は人それぞれとしてもひとつの結論を出して終わりになります。私としてはだいぶすっきりできる結末でよかったと思います。

 

 

まとめ

この話、男性の存在感がものすごくうすく、出てくる男性はどうしようもないやつだけだったりします。だからこそ、主人公が女性でも感情移入できたのかなあと思ったりします。まあ、私が本を読むときは割りと見境なく感情移入してしまうタイプなのもありますが。

 

がっつり感情移入させてくれ、ずるい構成(なんども言いますがいい意味で)で心ゆさぶってくれたこの作品は星四つです。

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