おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『死ぬことと見つけたり』 隆慶一郎 こち亀大原部長おすすめ

      2016/01/29

おすすめ本011

『死ぬことと見つけたり 上下』(文庫) おすすめ度☆☆☆☆☆

隆慶一郎(作者別索引) 新潮文庫 1994年9月初版 2007年9月改定

 

 

おすすめポイントを百文字で

生きながら死人と化した主人公たちが、悪人の罠を噛み破る様子は痛快の一言。主人公たちが次に何をしでかすか、ワクワクしながら読み進めました。未完というマイナス点を考慮しても、間違いなくおすすめの一冊です。

 

 

あらすじ

常住坐臥、死と隣合せに生きる葉隠武士たち。佐賀鍋島藩の斎藤杢之助は、「死人」として生きる典型的な「葉隠」武士である。「死人」ゆえに奔放苛烈な「いくさ人」であり、島原の乱では、莫逆の友、中野求馬と敵陣一番乗りを果たす。だが、鍋島藩を天領としたい老中松平信綱は、彼らの武功を抜駆けとみなし、鍋島藩弾圧を策す。杢之助ら葉隠武士三人衆の己の威信を賭けた闘いが始まった。(上巻作品紹介より)

 

 

こち亀大原部長と『花の慶次-雲のかなたに-』

こち亀に出てくる時代小説好きの大原部長が、藤沢周平、柴田錬三郎、司馬遼太郎と並んで絶賛している、隆慶一郎さん。

 

今好きな作家で打線を組んでみたで八番に入っていますが、この方、もともと脚本家として活躍されていて、小説を書き始めたのは、還暦を過ぎてからです。その上急逝されたので活動期間は五年あまりで、作品が少なく未完のまま出版されたものもあります。

 

亡くなられていることと、作品数が少ないので八番にしましたが、面白さは四番どころかメジャー級です。もう少し長生きしていただきたかっですね。

 

また、隆慶一郎さんは人気マンガ、『花の慶次 ―雲のかなたに― 』の原作の『一夢庵風流記』でも有名です。

 

実は、『花の慶次』には、今回の『死ぬこと見つけたり』からも色々とエピソードなどを引用しています。瞬間催眠術の元ネタなどがでてきます。何より、戦闘に際しての心構えというかスピリットなど、花の慶次の元ネタになっているので、慶次ファンはかなり楽しめます。

 

 

死人になる

主人公の斎藤杢之助(もくのすけ)は毎朝出来る限り細かく自分の死ぬ様子を想像する訓練を行っています。何でそんなことをするのか?死人(しびと)になるためです。

 

この死人というのがこの物語のキーワードです。自分はすでに死んだものと考え、命に執着することなく目的を果たすのが死人です。敵の船を沈めたかったら、火薬の入った樽を持って船に近づき、刀で自分の体ごと船に串刺しにして固定し、火薬に火をつければいいと考えます。

 

普通はこんなことを考えている人間が長生きできるわけないのですが、こんな主人公達がかえって生き延びるのがこの物語の面白さです。幕府の重役の松平伊豆守信綱などの敵が策を弄しても、死人である主人公達はその策を予想外の方法で上回るのが痛快です。

 

 

お気に入りのエピソード

物語の本筋は主人公杢之助とその仲間が、卑怯な手段で主人公達のいる鍋島藩をつぶそうとする陰謀を防ぐという話です。杢之助のエピソードを書いてしまうと本筋のネタバレになるので、お気に入りのサイドエピソードを一つ。

 

杢之助の娘、静香は許婚との祝言を間近に控えていました。そこに、静香宛に果たし状が届きます。相手は剣術道場で同門だった石井松之進という男です。女ながらに剣の達人だった静香に、この男ちょっかいを出して振られた上に、道場の師範代争いにも敗れた逆恨みで果し合いを申し込みました。

 

石井の目的は間近に控えた婚礼をつぶすことで、果し合いを断ったら勝手にどこでも襲い掛かるという無茶な条件を出します。

 

父親に武士として育てられた静香は果し合いの受けます。果し合いを受けても、受けなくても婚礼がつぶれることを悟った静香は、相手を殺し自分も自害する覚悟を決めます。

 

この覚悟を決めるまでの武士としての意地と、結婚を控えた女性としての気持ちの葛藤がいじましくて気に入ってます。また、果し合いを受けると決めたときに、果し合いの証人に許婚を選んだ理由が、結婚できないなら最後に迷惑をかけたいというのも、悲壮でありながらかわいらしいです。

 

もちろん、最終的には敵の罠を打ち破って祝言を挙げられます(正義が勝つのがこの話のいいところ)。父親同様死人と化した静香がどうやって敵の罠を切り抜けたかは、この作品を読んで確かめてください。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ 

『死ぬことと見つけたり』という作品は未完です。完成を待たずに作者がお亡くなりになってしまったので。一応、作者が編集者に語った未完成部分のプロットが巻末に載せられていますが、未完成というのはおすすめ度的にはマイナスだと思います。ただ、それを差し引いても、この話は面白いってことで最高評価の星五つです。

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