おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『阪急電車』 有川浩 ばあちゃん無双

      2016/01/24

おすすめ本008

『阪急電車』(文庫) おすすめ度☆☆☆☆☆

有川浩(作家別索引) 幻冬舎文庫 2010年8月    

おすすめポイントを百文字で

乗客同士がちょっとずつ絡み合っていて視点も変わるので、読んでいて色々な感情がわいてきます。あと、小説家の観察力ってスゲーなって、思う場面が凄く多いです。ちょっとした描写が心に刺さる、刺さる。

 

 

あらすじ

隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった……。片道わすが15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車――人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長編篇小説。(作品紹介より)

 

 

有川浩にはまるきっかけの本

好きな作家で打線を組んでみたで」堂々の四番にいる、有川浩さんにはまるきっかけになったのがこの本です。一番好きなのは『図書館戦争』ですが。

 

この話、ローカル路線の車内の出来事を描いています。最初に読んだときは、赤の他人の乗客同士がふとしたきっかけで関わりあい、それぞれの人生がちょっとだけ好転して行くが良かったのを覚えてます。 この手の仕掛けというか、伏線的なのが好きですね。

 

 

「すっきり」させてくれるばあちゃん無双

今回、再読して相変わらず面白く読めました。ニヤニヤしたり、笑ったり、ちょっと泣けたりと各シーンやその時の登場人物によって色々な感じ方ができて、楽しかったです。

 

特に「すっきり」できたところが、結構ありました。この話にはマナーの悪いおばちゃん集団やDV彼氏など、悪者が結構出てきます。この悪者がいることでベタ甘な恋愛物にピリリとスパイスが効いています。

 

この悪者達が懲らしめられるのがお仕置きってな感じで結構すっきりします。そのすっきり加減を演出してくれるのがばあちゃんです。このばあちゃんが正義というほどではないのですが一本凛とした筋を通す役割を担ってくれるので、やりすぎることなく悪者が懲らしめられていい具合にすっきりとできます。

「それだけのことをされて相手を呪わずにいられるなんて聖人くらいのものよ。行動力があって後悔しない決意があるなら殴り返したほうがよっぽどすっきりするわ」(P46)

あるひどい仕打ちをされたとある人物にかけた、ばあちゃんのセリフです。正義ではないでしょうね。でも、筋が通っています。この後にフォローが入るのですがそれも素敵です、ばあちゃん。

 

 

作家の観察眼

ある登場人物が車内でややテンションの上がったカップルを見た時

彼女のほうは興味深そうに食いついたが、彼氏のほうはどうやら彼女よりも周囲を意識しているようで、自然と話す声を低くする方向で彼女のテンションを落ち着かせた。中々やる。(P28)

こういうことって確かにありますが、それに気づいて文章にするのがすごいなって。最後の「中々やる」が印象的です。   ある人物のセリフです。

「価値観の違う奴とは、辛いと思えるうちに離れといたほうがええねん。無理に合わせて一緒におったら、自分もそっち側の価値観になれてまうから」(P168)

このせりふが出てくる背景もいいのですが説明すると長くなるのでここではやめておきます。ただ、「辛いと思えるうち」ってところが深いなと。辛いと思えることって結構ありますよね。

 

作家ってこういうことを常に観察していたり、考えていたりするのかなって思ってすごいなって感じました。友人のいじわるに対して凛として対処する小学生とか、まだまだ紹介したいエピソードも多いのですが長くなるのでやめておきます。

 

 

映画も見ました

多少エピソードを省略していますが、原作に忠実で原作ファンが安心して楽しめる作品だと思います。個人的には主演の中谷美紀さん、はあちゃん役の宮本信子さんの演技が良かったです。

 

同じ電車の中にいろいろな人がいる様子は、小説よりも映像のほうが、より説得力を感じました。映像化することで作品の良さがさらに引き出せている気がします。舞台になった阪急今津線沿線の映画館では当時の興行収入記録を塗り替えたっていう話もうなずけます。

書評的な読書感想文

物語の前半絡んだ赤の他人が半年後の後半も影響しうのは、ちょっと都合よぎるだろうっていう突っ込みもあるようです。また、私の読みが間違っていなければ、ちょっとした矛盾もありました。

 

けれどそんな無粋なことは言わずに、いろいろな登場人物といろいろな感情を持って話を読んでいけると思います。ところどころに観察眼の鋭い作者の片鱗を感じながら。そんなわけで、ニヤニヤしたり、笑ったり、ちょっと泣けたり、すっきりしたりってな感じで星五つです。 

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