おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『プラスティック』 井上夢人 息継ぎが必要

      2016/01/17

おすすめ本006

『プラスティック』(文庫) おすすめ度☆☆☆☆

井上夢人(作家別索引) 講談社文庫 2004年9月 

 

 

おすすめポイントを百文字で

気持ちの悪い矛盾が次々に出てきて、なんとも言えない息苦しさを感じました。読書の最中に息継ぎのために読むのを中断したのは初めてです。ネタに気付いたと思ってから、もう一段奥があったのにはやられました。

 

 

あらすじ

54個の文章ファイルが収められたフロッピィがある。冒頭の文章に記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦・向井絢子が書きこんだ日記だった。その日記こそが、アイデンティティーをきしませ崩壊させる導火線となる!謎が謎を呼ぶ深遠な井上ワールドの傑作ミステリー。(作品紹介より)

 

 

矛盾が生み出す息苦しさ

自分以外にもう一人自分がいる。そんな不安に感じた主婦の日記から物語は始まります。物語を読み進めるとこれ以外にも、奇妙な矛盾が次々に出てきます。 ホラーテイストなわけではないのですが、どんどん出てくる矛盾が気持ち悪く、ねっとりとした液体で体が包まれているような息苦しさを感じました。

 

本を読んでいて息継ぎをするために、いったん本を閉じて休憩したのは初めてです。

 

 

仕掛けの作家井上夢人

今好きな作家で打線を組んでみたで二番に入った井上夢人。私が考えるこの作家の特徴は、トリックや伏線など読者をあっと驚かせる仕掛けが上手いことだと思います。

 

ただし、単なるトリックや伏線で終わらず、 そこからもう一段階奥行きがあるので驚かされます。二重、三重に仕掛けがあるような話が個人的にはすごく好きなので、井上夢人はお気に入りです。ちなみに井上夢人の作品を初めて読んだとき(プラスティックではないです)の感想は、「この人多分すごく頭がいい」です。

 

この物語もある仕掛けが非常に重要なのですが(ゆえにその仕掛けをネタバレさせずに話すのが非常に難しいのですが)、仕掛けに気付いてからがこの話の本番と言えます。 私はミステリーのトリックなど、あまり解こうとはしないのですが、この話の仕掛けは真相が明かされる少し前に気付きました。

 

と思ったら私の気付いてない真相があり、さらにそこからが物語の核心でした。上に書いた井上作品らしい、二重、三重の仕掛けがしっかり決まっています。 ネタバレできないために、ふわふわした書き方になっていてなんだか申し訳ないですが、面白いのは間違いありません。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

話の大本になる仕掛けはひとつなんですが、その一つでしっかり驚かしてくれるこの作品。星5つにしたいとこなんですが、惜しむらくはネタの鮮度がやや低い。単行本の初版の1994年に読んでいたら、衝撃は今と比べ物にならなかっただろうと思うと、すごく惜しい気がします。ということで、星4つ。

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