おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『残穢』 小野不由美 後引く怖さ

   

書評的な読書感想文386 おすすめ度☆☆☆☆

『残穢』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

小野不由美(作家別索引

新潮文庫 2015年8月

ホラー サスペンス(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

ホラーはホラーでも一味違った怖さのあるホラー。本を閉じた後も後引く怖さがあります。また、土地の歴史を追いかける過程や、怪異や仏教などの社会科学的な考察も面白い。ただ、色々と理屈っぽいところも。

 

あらすじ

この家は、どこか可怪しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が……。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢れ」となり、感染は拡大するというのだが――山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!

 

後引く怖さの山本周五郎賞受賞作

直木賞と似た性質の文学賞ながら、直木賞よりもエンタメよりな山本周五郎賞は、ホラー作品がいくつも受賞しています。今作もその一つなのですが、私がイメージするホラーとは一味違った怖さがある作品です。

 

どこが一味違うかというと、恐怖の根源が幽霊や心霊現象ではないところにあることです。一般的なホラーは貞子のような幽霊が出てきたり、何かしらの心霊現象が起こることで恐怖をかきたてるのですが、この作品では(幽霊も心霊現象も出ますが)恐怖の根源が別のところにあります。

 

では何が恐怖の根源になるかというと、「穢れ」という概念。そして「穢れ」は土地や人を介して感染するという事象です。貞子が私の目の前に現れることはおそらくないでしょうが、日常生活していて「穢れ」に触れてしまうことはあります。というか、既に触れている可能性すらあるので、本を閉じても恐怖が後を引きます。そこが本を閉じたらそれで世界が終わってしまう普通のホラーとは一味違うところだと思います。

 

また、作者らしき人物が主人公になって、ドキュメンタリー調で物語が進むところも本を閉じでも後引く怖さに一役買っています。

 

土地の歴史と社会科学的考察

物語は作者らしき主人公が、「穢れ」の根源を求めて時代をさかのぼる形で描かれます。その過程で、土地の歴史を掘り下げたり怪異や仏教などについて社会科学的に考察するシーンがしばしばあるのですが、これがとても興味深くかつ物語にリアリティーを与える役目を果たします。

 

土地の歴史といっても、単にその土地にどんな人が住んでどんな出来事があったのかをさかのぼるだけなのですが、色々な出来事が掘り起こされてなかなか興味深いものがありました。自分が住んでいる土地で同じことをやるとどんな事柄が掘り起こされるか考えてしまいます。

 

また、心霊現象を体験した人間の心理的な状態や願望などから、錯覚である可能性を考慮したり、浄土真宗では幽霊の存在を想定していないことなど、怪異に関する現象を様々な観点で考察しています。あえてしているのでしょうが、ちょっと理屈っぽくてくどく感じることもありますが、ホラーとは別に読み物として面白く読めました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

普段あまり手を出さないホラーですが、一味違った怖さを味わえたことと、ホラー要素以外の点でも楽しめたということで、おすすめ度は星四つです。

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