おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『娼年』 石田衣良 2018年春に映画公開

   

書評的な読書感想文383

『娼年』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆☆(星数別索引&説明

石田衣良(作家別索引

集英社文庫 2004年5月

恋愛 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

娼夫が主人公で、女性の欲望がテーマなのですが、いくつかあるセックスシーンなど、変な生々しさがなく、サラリとした文章で描かれているのが凄いです。要所要所で語られる欲望に対する考えも切れ味鋭い、名作です。

 

あらすじ

恋愛にも大学生活にも退屈し、うつろな毎日を過ごしていたリョウ、二十歳。だが、バイト先のバーにあらわれた、会員制ボーイズクラブのオーナー・御堂静香から誘われ、とまどいながらも「娼夫」の仕事をはじめる。やがてリョウは、さまざまな女性のなかにひそむ、欲望の不思議に魅せられていく……。いくつものベッドで過ごした、ひと夏の光と影を鮮烈に描きだす、長編恋愛小説。(作品紹介より)

 

松坂桃李さん主演で2018年春に映画公開

今回紹介する作品は、2018年春に松坂桃李さん主演で映画が公開されることが決まっている石田衣良さんの『娼年』です。以前に舞台化された際の演出の三浦大輔さんが監督を、主演はそのまま松坂さんがやるそうです。

 

上にも書きましたが、女性のセックスに対する欲望がテーマなのでR-18作品になるそうです。舞台のときの女性キャストは高岡早紀さんや佐津川愛美さんが出演されたそうですが、映画ではどなたが出るのか気になるところです。

 

ちなみに、この作品の続々編である『爽年』が雑誌「小説すばる」にて10月から連載しています。

 

サラリとした性描写

物語の主人公は「娼夫」、お金を受け取って女性に性的、非性的なサービスを提供する男性です。当然、サービスの一環としてっ女性とベットを共にすることしばしばあり、物語の中にもそういった描写が何度も出てきます。

 

様々な欲望をもった女性とのセックスシーンがいくつもあるのですが、変な生々しさがなくサラリとした描写で描かれているのが凄いです。『池袋ウエストゲートパーク』などでも感じられるスタイリッシュな文体がこの作品にも生かされていて、粘度の低い文体でかかれるセックスシーンはエロティックさよりも美しさやクールさが感じられます。

 

女性の欲望

物語の中でしばしば語られる女性の欲望に対する考えが切れ味鋭く印象的です。

 

始めはセックスに対して、

実際におこなえばそれなりに気もちはいいが、寝心地のいいひとりきりのベッドを抜けだしてまで試す価値はない。(P19)

なんて考えていましたが、娼夫の仕事をするうちに、

女性ひとりひとりのなかに隠されている原形的な欲望を見つけ、それを心の陰から実際の世界に引き出し実現する。それが娼夫の仕事だとぼくは考えるようになった。(P107)

と考える様になった主人公。

 

さえない中年男性と主人公との三人のセックスを楽しむ女性に対しては、「とても健康的な女性」「自分自身よりちょっと大きな欲望をもっているだけ」と評したりします。物語の後半で主人公は

法律上の善悪はともかく、身体を売って金を稼ぐことの道徳的な意義はぼくにはわからない。だが、今は欲望の秘密を解き明かすことに魅せられていた。(P158)

なんて考えていますが、どんな秘密が解き明かされるかは、読んで確かめてほしいです。

 

娼夫仲間

物語で主人公の娼夫仲間であるアズマという人物が出てきます。主人公の娼夫に対する考え方に影響を与えることになるキーパーソンであるのですが、彼のセックスシーンが強烈です。

「(管理人註:略)ぼくには痛みだけがセックスなんだ」(P145)

といって、ちょっと特殊な性癖を持つアズマのセックスシーンは、物語のワンシーンとしては私が今まで読んできた小説の中で一番(それはもう、夢に出てきそうなほど)印象に残ったシーンです。

 

書評的な読書感想文のまとめ

女性の欲望を作者らしいサラリとした文章で描いた作品。特殊なテーマを印象的に描いた名作ってことと、私史上一番印象に残っているシーンがある作品ってことで、星五つです。もちろん続編も読みます。

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