おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『長崎ぶらぶら節』 なかにし礼 作者は有名な作詞家

   

書評的な読書感想文382 おすすめ度☆☆☆☆

『長崎ぶらぶら節』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

なかにし礼(作家別索引

文春文庫 2002年10月(このブログに使われてる画像等は新潮文庫版です)

人情 時代(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

これは良作。戦前の長崎の風俗、史実を基にしたストーリー、主人公の造形なども良いのですが、歌に関する部分が絶品。良い歌を見つけたときと、良い歌ができたとき、二つの感動があります。また、作詞家らしい歌論も秀逸。

 

あらすじ

長崎の丸山遊里に愛八という名の芸者がいた。彼女が初めて本当の恋をしたのが、長崎学の研究者・古賀十二郎。「な、おいと一緒に、長崎の古か歌ば探して歩かんね」――忘れられた名曲「長崎ぶらぶら節」との出会い。そして父親のいない貧しい少女・お雪をはじめ、人々に捧げた愛八の無償の愛を描く。第122回直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

有名作詞家が描く直木賞受賞作

今回紹介する作品の作者、なかにし礼さんはテレビ朝日のワイドショー、「ワイドスクランブル」のコメンテーターとしても有名ですが、何より作詞家として数々のヒット曲を世に出した方です。代表作は、北島三郎 さんの「まつり」や細川たかしさんの「北酒場」などで演歌に疎い私ですら知っている曲がいくつもありました。

 

そんななかにしさんが描く今回の物語は、戦前の長崎が舞台になっています。遊郭が物語の中心になっていたり、くんちの祭なる地元のお祭が詳しく描写されていたりして風俗的にも興味深い作品です。

 

吉永小百合さん主演で映画化もされているので、ビジュアル面で興味をもたれた人にはおすすめです。

 

史実をもとにしたストーリー

今作を一言で言い表せば、無償の愛に生きた、長崎の芸者・愛八の一生です。中でも、愛八が唯一愛した長崎の郷土史研究家の古賀十二郎と古い民謡を聞き集め、記録に残す場面が一番印象的に描かれています。

 

そんな主人公の愛八や古賀は実在した人物で、物語も基本的には史実にもとづいています。物語の中で愛八は民謡「長崎ぶらぶら節」をレコードに録音するのですが、その音源も実際に残ってます【長崎ぶらぶら節〈amazonへ〉】。もちろんディテールは脚色しているのでしょうが、史実だと知ったときには、面白い人物がいたもんだと感心しました。

 

歌、歌、歌

この作品の何よりの見所はやはり歌に関する部分です。古い民謡を聞き集めている際に隠れキリシタンの村に伝わっている歌を始めて聞いた場面は、ぞわりと鳥肌が立つぐらい感動的でした。

 

他にも、すばらしい歌の歌詞を思いついたシーンなどは、人気作詞家さんならではの体験が元になっていると思われます。また、歌論というか、歌に対する思いを登場人物が語りシーンがいくつもあるのですが、これなんかも作詞家さんとして長年生きてきた作者の思いが込められているように思えます。

「それがよかたい。歌とはそういうものだ。なにかいい歌を作ってやろうと思ってチビ鉛筆をなめなめ考えたところで出てくるものはなか。歌は天から降ってくるものたい。」(P127)

 

書評的な読書感想文のまとめ

戦前の長崎で実際に起きた史実と、作詞家さんらしい歌への思いが融合した今回の作品。満場一致で直木賞を受賞したのもうなずける良作ってことで、おすすめ度は星四つです。

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