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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『君たちに明日はない』 垣根涼介 サラリーマン小説の完成形

   

書評的な読書感想文380 おすすめ度☆☆☆☆

『君たちに明日はない』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

垣根涼介(作家別索引

新潮文庫 2007年10月

お仕事 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

面白い。サラリーマン小説の一つの完成形だと思います。リストラという重いテーマを軽いタッチで描いていて、暗くなることなく前向きに読めました。ただ、シビアなところはシビアで、そのバランスが秀逸です。

 

あらすじ

「私はもう用済みってことですか!?」リストラ請負会社に勤める村上真介の仕事はクビ切り面接官。どんなに恨まれ、なじられ、泣かれても、なぜかこの仕事にはやりがいを感じている。建材メーカーの課長代理、陽子の面接を担当した真介は、気の強い八つ年上の彼女に好意をおぼえるのだが……。恋に仕事に奮闘するすべての社会人に捧げる、勇気沸きたつ人間ドラマ。山本周五郎賞受賞作。(作品紹介より)

 

リストラがテーマの山本周五郎賞受賞作

リストラがテーマになっている垣根涼介さんの直木賞受賞作品。この作品を第一弾として、現在第五弾まで出版されている人気シリーズで、数年前には坂口憲二さん主演でドラマ化もされました。

 

物語の主人公はリストラ請負会社の社員の村上真介です。彼の仕事は依頼された会社に出向き、面接官として問題社員を自主退社に仕向けることです。物語では五人のリストラ候補が出てきて、リストラという社会人にとっての極限状態に直面することでむき出しにされる人間を描いています。

 

以前このブログで紹介した源氏鶏太さんの『英語屋さん』がサラリーマン小説の嚆矢とするならば、リストラされる社会人の行く末をリアルに取り上げながらも、エンターテイメントとしても面白いこの作品はサラリーマン小説のひとつの完成形なのかなって思います。

 

重いテーマを軽いタッチで

リストラという重いテーマを扱いながらも、第五弾までも続く人気シリーズになった理由の一つは、軽いタッチで描かれていて、暗くなることなく前向きに読めるエンタメ作品であるということです。

 

文章自体が

あんな下衆野郎など、クビになって当然だ。だが、それを今まで見て見ぬふりをしてきたこの建材メーカーと、その意向に沿ってもっともらしい理由を見つけ、辞職勧告を促す自分――ちくしょう。いったいおれは何様だ?ウンザリだ。(P25)

と、深刻ながらも軽さを感じさせる一人称だったり、主人公がどこか憎めない、ちょっぴりチャラいところがある人物であったりと、読んでいてあまり暗くなることのない文章で描かれています。

 

その上で、物語がリストラがきっかけで仕事のあり方や人生を見直す話になっていて、読んでいて前向きになることができます。

 

サラリーマンの人には響くのか?

軽い文章で前向きになる物語ではありますが、フィクション然としていてリアリティーがないかというと、そんなことはありません。明らかな問題社員に関しては、何の救いもなくばっさりとリストラされています。

リストラ最有力候補になる社員にかぎって、仕事と作業の区分けが明確にできていない。つまり、自分の存在がこの会社にとってどれだけ利益をもたらしているのか。(P46)

なんて文章はなかなかシビアで、的確な指摘なのかなと思います。上にも書いた文章の軽さと、こういったシビアさのバランスが絶妙なのも、広く読者に支持される一因だと言えそうです。

 

他にも

それは、この山下が現在自分の所属する会社を「ウチの会社」と言わなかったことでも分かる。「おれが今いる会社」と言った。自分と会社との立場を安易に同一視できるほど、生ぬるい職場環境ではないということだ。(P265)

なんて文章は、ほとんどまともにサラリーマン生活をしたことのない私には、かなりシビアでリアリティーのある文章に感じられますが、実際のサラリーマンの皆さんにはどこまで響くのでしょうか?読んで確かめてほしいところです。

 

書評的な読書感想文のまとめ

軽さとシビアさ、エンタメ性とリアリティーのバランスが絶妙で、読むと前向きになれる作品です。サラリーマン経験の乏しい私が言うのもなんですが、サラリーマンの方にぜひとも読んでもらいたいということで、おすすめ度は星四つです。

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