おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『光媒の花』 道尾秀介 闇から光へのグラデーション

   

書評的な読書感想文378 おすすめ度☆☆☆

『光媒の花』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

道尾秀介【道尾秀介さんの他の作品】(作家別索引

集英社文庫 2012年10月

人間ドラマ サスペンス(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

不穏な出だしで始まる連作短編集。暗い物語が徐々に明るい物語に変化するグラデーションが鮮やかで、最後は心温まる物語に。ただ、鮮やか過ぎて印象に残らない気もします。いっそ、不穏なままでもよかったのか。

 

あらすじ

一匹の白い蝶がそっと見守るのは、光と影に満ちた人間の世界――。認知症の母とひっそり暮らす男の、遠い夏の秘密。幼い兄妹が、小さな手で犯した闇夜の罪。心通わせた少女のため、少年が口にした淡い約束……。心の奥に押し込めた、冷たい哀しみの風景を、やがて暖かな光が包み込んでいく。すべてが繋がり合うような、儚くも美しい世界を描いた全6章の連作群像劇。第23回山本周五郎賞受賞作。(作品紹介より)

 

不穏な出だしの山本周五郎賞受賞作

以前紹介した『月と蟹』で直木賞を受賞した道尾秀介さんの山本周五郎賞受賞作品。この作品も直木賞の候補にはなっていましたが、残念ながら落選。次の回の『月と蟹』で受賞に至ります。

 

今回の作品は、認知症の母親と暮らす中年の男のある回想から始まります。読んでいて気になったのが、序盤から漂う不穏な雰囲気です。『月と蟹』の時にも思ったのですが、道尾さんは言葉選びや文体など、内容以外のところで不穏な雰囲気を醸し出すのがとてもうまいなと

 

そして、物語がすすむにつれて、内容もどんどんと重く暗くなっていきます。微妙に登場人物がリンクしている短編が連なる形式で書かれている作品なのですが、中盤はかなり重い展開になります。

 

闇から光へのグラデーション

ただ、とあるきっかけで物語は明るい方向へ転換していきます。この闇から光へのグラデーションがとても鮮やかで、この物語の最大の見所になっています。終盤には物語漂っていた不穏な雰囲気は取り払われ、各章の登場人物の闇も昇華されていき、心温まる物語へと変化しています。

 

読み終わってから、ある印象的なシーンで物語に流れる負の連鎖が断ち切れたことを意味している、と気が付いたのですが、その瞬間、じわりと胸の中に感動が広がりました。

 

ひねくれた読み方をすれば

素直な感想ならここで話を終わらしても良いのですが、正直にいうと私はちょっとひねくれた読み方をしてしまいました。

 

物語は各人物の闇が昇華され、明るいラストを迎えるのですが、ちょっと御都合主義的なのが気になります。登場人物の中には、行ったことの罪を考えるとそんな簡単に救われてしまっても良いのかと思うキャラもいますし、逆にもっとしっかり救われるべきキャラもいます。

 

基本的に明るい結末の話が好きなのですが、この物語に関しては、いっそ不穏な雰囲気のまま終わらしても良かったのではと思いました。その方が、読者が色々考えて心に残る物が多いのかなと。

 

書評的な読書感想文のまとめ

物語が、暗い話から明るくなるグラデーションが鮮やかで、最後は心温まる作品です。ただ、個人的には不穏なままラストを迎えても良かったのではと思ってしまったので、おすすめ度は星三つです。

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