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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『英語屋さん』 源氏鶏太 サラリーマン小説の先駆け

   

書評的な読書感想文375 おすすめ度☆☆☆☆

『英語屋さん』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

源氏鶏太(作家別索引

集英社文庫 1983年9月

お仕事 人情(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

戦後すぐのサラリーマンの喜びや悲哀を描いた作品。会社勤めの様子は今とはだいぶ違っているのに、そこに生きる人間の本質は不変なのが面白い。サラリーマン小説の先駆となった作品で、読む価値ありです。

 

あらすじ

茂木さんは英語力抜群。外人との交渉には欠かせない人だが、学歴がなくて性格が少しゆがんでいる。上司に反抗したり新入社員の英語力をためしたり評判はよくない。そんな茂木さんが解雇辞令をはねつけた。風間京太は茂木さんに理解を示しながら、外人との重要な取引に彼の英語力を生かす。表題作ほか、勤勉なサラリーマンを象徴する風間京太を主人公にしたユーモア傑作選。(作品紹介より)

 

サラリーマン小説の先駆けとなった直木賞受賞作

作者の源氏鶏太さんは戦前から戦後のかけて、住友財閥系の会社でサラリーマンをしながら副業で小説を書いていた方です。今でこそ当たり前のように書かれているサラリーマンが主人公の小説ですが、戦前は小説にはならないといわれていたのを、本業の経験を生かし、最初にサラリーマン小説を送り出したのが源氏鶏太さんと言われています。

 

今回の作品は、直木賞を受賞した表題作の「英語屋さん」をはじめとした、サラリーマン風間京太を主人公とした、短編8編と、私小説風のサラリーマン小説2編を加えた全10編です。粋でしゃれっ気があって、どの話もオチに何とも言えない味があるのも特徴的です。

 

サラリーマンの喜びや悲哀

今回の作品のテーマをあげるとしたら、戦後すぐのサラリーマンの喜びや悲哀です。

 

例えば、問題なくこなせば課長職も見えてくる、社長に随行しての北海道出張、その大役を仰せ付かった風間京太の様子を描いたのが、直木賞候補にもなった「随行さん」です。ただでさえ気難しい社長のお守りも大変なのに、社長婦人からもとあるミッションを命じられ、ますます困難になった状況に四苦八苦するサラリーマンが哀愁を誘います。

 

闇屋のなった元上司や有能なのに扱いづらい正確なために窓際に追いやられた先輩の運命を描いた「手遅れ会」では、サラリーマンの闇の一面を描いていて、結構ブラックな内容になっています。

 

表題作の「英語屋さん」は有能ではあるが性格が歪んでいる通訳の茂木さんにシンパシーを抱いた主人公の風間京太が、くびの危機に瀕している茂木さんを救う物語です。会社や上司に押しつぶされるサラリーマンの悲哀と、それを跳ね除けたときの喜びが描かれている秀作です。

 

変わったものと変わらないもの

上に書いたようにサラリーマンの喜びと悲哀が描かれている今回の作品ですが、戦後すぐの会社の様子は今とはだいぶ違っていて興味深いです。

 

重役が「うまく因果をふくめてあの持て余し者を首にしちまい給え。(P160)」なんて平気で言っていたり、メーデーのデモに参加した女子社員が逮捕されていたりと、今では考えられないことが色々書かれています。

 

個人的に一番びっくりしたのは、(不祥事で)会社を首になった人間が、再雇用を求めて何度もその会社の元の部署に通ってくることです。そんな厚顔無恥なことをする人がそもそもいないかもしれませんが、今だったら即刻、警察に通報されそうです。

 

そんな、今とはまるっきり異なった会社の様子が描かれていますが、今とは変わらないこともありました。それは人間が持っている本質で、ずるかったり、反対にお人よしだったり、不器用だったり、要領が良かったりするサラリーマンの姿です。

 

会社の様子は、良くも悪くも今とだいぶ変わっていますが、そこに勤めるサラリーマンの持っている本質や苦労は今となんら変わらないのが、とても面白いと思いました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

戦後の会社勤めの様子は今とだいぶ違いますが、そこに勤めるサラリーマン達にはとても共感できます。「半沢直樹」シリーズなど今では当たり前になっているサラリーマン小説の先駆けとしても読む価値あるってことで、おすすめ度は星四つです。

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