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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『安徳天皇漂海記』 宇月原晴明 安徳天皇は生きていた

   

書評的な読書感想文374 おすすめ度☆☆

『安徳天皇漂海記』(文庫)

おすすめ度☆☆(星数別索引&説明

宇月原晴明(作家別索引

中公文庫 2009年1月

時代 ファンタジー(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

作者のイマジネーションと知識量は凄く、情景描写も素晴らしいのですが、物語としては響きませんでした。三人の王の滅亡がテーマですが、ファンタジーでこの三つをつなぐ必然性がわかりません。

 

あらすじ

壇ノ浦の合戦で入水した安徳天皇。伝説の幼帝が、鎌倉の若き詩人王・源実朝の前に、神器とともにその姿を現した。空前の繁栄を誇る大元帝国の都で、巡遣使マルコ・ポーロは、ジパングの驚くべき物語をクビライに語り始める。時を超え、海を越えて紡がれる幻想の一大叙事詩。第19回山本周五郎賞受賞作。(作品紹介より)

 

歴史ファンタジーな山本周五郎賞受賞作

今回の物語の一番の核になることは、壇ノ浦の戦いで死んだはずの安徳天皇が生きていたということです。日本書紀にも出てくる神様を包むための神器に包まれた状態で、鎌倉幕府の第三代将軍、源実朝の前に現れたところから物語は動き出します。

 

その後、紆余曲折を経て、数十年後に、今度はクビライ・カーンの支配する中国の元の時代に、元の前の国家だった宋の最後の皇帝やマルコ・ポーロの前にも姿を現します。

 

平家と共に死んだはずの天皇、源氏最後の将軍、中国の国家、宋の最後の皇帝、三人の王の滅亡が物語のテーマになっています。

 

イマジネーションと知識量

物語を読んでまず感じるのが、作者のイマジネーションと知識量は凄さです。源実朝の晩年の奇行、中国へ渡航しようとしたり異常に官職にこだわったことなどを、安徳天皇が生きていたということと結びつけて物語にするイマジネーションは本当にすごいと思います。

 

また、そのイマジネーションに説得力を持たせるため、『金槐和歌集』や『吾妻鏡』などの資料を使った文章も驚くべきもので、作者の知識の多さがうかがい知れます。他にも、元の時代の中国の都市の描写も素晴らしく、本当に目の前に中国の都市が再現されたかのような気持ちになりました。

 

ただ、部分的には素晴らしいところがいっぱいありましたが、物語としてはあまり響きませんでした。

 

三つの滅亡

上にも書いたように、安徳天皇、源実朝、宋の最後の皇帝、この三つの滅亡が物語のテーマです。一つの家が滅びる姿はそれぞれに切ないものがありますし、(フィクション、ノンフィクション両面で)歴史的な意外な事実もあって、個々にはそれなりに楽しめました。

 

ただ、個人的にはどうしても解決しない疑問が残るのですが、安徳天皇が生きていたというファンタジーを使ってまで、この三つの滅亡を一つの物語としてつなげる必然性は何なのかということです。

 

この作者ほどの知識とイマジネーションがあるのならば、個々の滅亡をそれぞれ単独で物語にするべきではないのかなと思いました。この点が、物語として私には響かなかった原因になっているのかなと思います。

 

書評的な読書感想文のまとめ

源実朝と宋の最後の皇帝を、安徳天皇が生きていたという事実で結びつけるという、物語の一番の根本の設定の必然性が理解できなかったので、部分部分では凄いなと思うところがいっぱいありますが、おすすめ度は残念ながら星二つです。

 

ファンタジーは好き嫌いが分かれるなあ。

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