おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『夢の守り人』 上橋菜穂子 タンダ、トロガイの掘り下げ回

   

書評的な読書感想文369 おすすめ度☆☆☆

『夢の守り人』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

上橋菜穂子【上橋菜穂子さんの他の作品】(作家別索引

レーベル 2008年1月

ファンタジー 冒険(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

サブキャラを掘り下げたり、過去に出てきたキャラが成長していたりと、シリーズ物の醍醐味を味わえる作品。また、児童文学ですが大人でも考えさせられるテーマを持っています。ただ、冒険的なワクワク感が少ないのが残念。

 

あらすじ

人の夢を糧とする異界の“花”に囚われ、人鬼と化したタンダ。女用心棒バルサは幼な馴染を救うため、命を賭ける。心の絆は“花”の魔力に打ち克てるのか?開花の時を迎えた“花”は、その力を増していく。不可思議な歌で人の心をとろけさせる放浪の歌い手ユグノの正体は?そして、今明かされる大呪術師トロガイの秘められた過去とは?いよいよ緊迫度を増すシリーズ第3弾。(作品紹介より)

 

守り人シリーズ第三弾

『鹿の王』で2015年に本屋大賞を受賞した上橋菜穂子さんの作品で『精霊の守り人』『闇の守り人』の続編で、「守り人」シリーズの第三弾です。今作では、『精霊の守り人』で活躍したキャラが掘り下げられたりしているので、少なくとも『精霊』を読んでからのほうが良いでしょう。

 

このシリーズはもともと児童文学のレーベルである偕成社から出版された異世界を舞台にした冒険ファンタジーシリーズですが、王位継承にまつわる陰謀などビターなテーマを扱っていたり、文化人類学者でもある作者の知識を生かした緻密な世界観の物語で大人でも十分に楽しめる作品になっています。

 

物語の舞台は(あくまで私が読み取ったところでは)日本に似た国の弥生時代から飛鳥時代の間ぐらい文明度になっています。

 

シリーズ物の醍醐味

一作目の『精霊の守り人』は主人公やサブキャラたちの顔みせ、『闇の守り人』は主人公のバルサが過去に決着をつける話でした。そして、今回はサブキャラの再登場と掘り下げが行われていて、シリーズ物を読む醍醐味が味わえます。

 

主人公のバルサの幼馴染で薬草師のタンダは準主役の立ち位置で、いろいろピンチに陥ったり、活躍したりします。読者が気になるバルサに対する気持ちが語られていたりもします。他には、タンダの師匠で呪術師のトロガイの意外な過去が明らかになっていたり、シュガなど一作目に登場したキャラが再登場します。

 

そして何よりうれしいのは、一作目の準主役であるチャグムの再登場です。一作目の序盤でどこか幼かったチャグムが、たくましくしたたかに成長して帰ってきます。皇帝である父親を向うに張って交渉をするなど大人になっている反面、ちょっとした無茶をする子供らしさもあって、読んでいて子供の成長を喜ぶ父親気分で思わずほほが緩みました。

 

サブキャラたちの世界が過去に未来に広がることが、シリーズ物の醍醐味の一つだと思うのですが、今作ではそれが十分に味わえます。

 

大人も楽しめるファンタジー

過去二作の紹介のときにも書きましたが、今作でも大人が楽しめるビターな要素がいろいろあります。

 

例えば今回の準主役の薬草師のタンダは、村人や兄弟たちとすら距離を置かれます。真っ当な農民ではない薬草師は税を免除される代わりに、保護を受けることもできず、村人と結婚もできないという設定です。なんてことはない設定ですが、信仰や差別に関わる問題をはらんでいますし、おそらくは、作者が文化人類学者のだったころの知識を生かした設定ではないかと思います。

 

また、今作のラスボスである異界の花は、人の夢を糧にして成長するのですが、現実に不満を持つ人ほど取り込まれやすい性質があります。現実に不満がある人は、異界の花が見せる都合の良い夢から抜け出せなくなるのですが、この設定なんかは大人のほうが読んでいてドキッとさせられるのではないでしょうか。

 

書評的な読書感想文のまとめ

シリーズ物の醍醐味が味わえ、大人も楽しめる作品になっているのですが、一つだけ大きな不満があります。それは、今作には冒険をするときのワクワク感が少ないことです。

 

一作目ではチャグムとバルサの逃避行が、二作目では迷路のような洞窟を進むシーンがあってドキドキワクワクすることができました。そういった冒険のシーンが今作には少ないのが残念ってことで、おすすめ度は星三つ止まりです。

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