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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『異人たちとの夏』 山田太一 終盤の展開は必要か?

   

書評的な読書感想文367 おすすめ度☆☆☆

『異人たちとの夏』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

山田太一(作家別索引

新潮文庫 1991年11月

ファンタジー 人情(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

じんわりと心に染みるちょっと悲しい物語。ファンタジーですが、突飛な感じはせず、すんなり設定を受け入れられました。ただ、一番最後のどんでん返しが私には不要に思えました。無いと物語として平坦すぎるのか?

 

あらすじ

妻子と別れ、孤独な日々を送るシナリオ・ライターは、幼い頃死別した父母とそっくりな夫婦に出逢った。こみあげてくる懐かしさ。心安らぐ不思議な団欒。しかし、年若い恋人は「もう決して彼らと逢わないで」と懇願した……。静かすぎる都会の一夏、異界の人々との交渉を、ファンタスティックに、鬼気迫る筆で描き出す、名手山田太一の新しい小説世界。第一回山本周五郎賞受賞作品。(作品紹介より)

 

ドラマ『ふぞろいの林檎たち』の脚本家による山本周五郎受賞作

今回の作品の作者の山田太一さんは脚本家として数々の名作を生み出した方です。ドラマ『ふぞろいの林檎たち』を始め、朝ドラや大河ドラマを手がけ、映画『少年時代』では日本アカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞しています。そんな山田さんの第一回山本周五郎賞受賞作品が、今回取り上げる作品です。

 

ちなみに、今回の作品『異人たちとの夏』は尾道三部作で有名な、大林宣彦監督で映画化されていますが、脚本はご本人ではなく、市川森一さんが担当しています。

 

心にしみるファンタジー

物語は妻子と別れた孤独に暮らすシナリオライターが、幼い頃に亡くなった両親に似た夫婦にであう物語です。じんわりと心に染みるちょっと悲しいファンタジーで、幽霊(のようなもの)が出てくることもあって、以前紹介した『鉄道員(ぽっぽや)』に似ていると思いました。

 

主人公の両親は職人気質な父親と世話好きでちょっとおせっかいな母親で、昭和の古き良き家族の形を現しています。主人公を中心としたちょっぴり甘ったれたやり取りは、38才のおっさんの私には子供時代を思い出させる、気恥ずかしくも懐かしいなんともいえない気持ちさせるシーンになっています。

 

もちろんこの物語がファンタジーであることは分かって読んではいますが、主人公が両親とあって一緒に食事などをしているシーンがリアルで懐かしいので、自然とファンタジーな設定を受け入れていました。

 

ラストのどんでん返し

物語のキーパーソンは主人公と同じマンションに住む、年の離れた恋人です。その恋人は主人公が両親らしき人物たちに会うこと反対します。

 

と、ここから物語は一気に展開します。なぜ恋人は両親に会うことに反対するのか?などなど、衝撃の事実が徐々に明らかになります。そして、ラストでどんでん返しが起こるのですが(詳しく言ってしまうと読む楽しみがなくなるのでいえませんが)、この展開って必要ないのかなって思いました。

 

わりとロマンティストところがある私としては、ちょっと悲しいファンタジーで終わらしていい気がするのですが、それだと物語として平坦すぎるのかなとも思います。

 

どちらにしろ、ラストの展開の受け止め方で、物語の評価が変わりそうです。

 

書評的な読書感想文のまとめ

前半は、『鉄道員(ぽっぽや)』のような、悲しくも心温まるファンタジーといったところです。個人的には、ここまでの短編として終わった方が良いのかなと思いました。

 

ただ、後半の展開があるからこそ、物語として凹凸ができて、読み応えが生まれるのかなとも思うってことで、おすすめ度はどっちつかずの星三つです。

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