おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『古書法楽』 出久根達郎 通人たち

   

書評的な読書感想文366 おすすめ度☆☆☆

『古書法楽』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

出久根達郎(作家別索引

中公文庫 1996年1月

エッセイ ノンフィクション(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

江戸や明治の頃の通人を紹介したエッセイが面白い。破天荒で粋な人たちの生涯は、私たちの生きるヒントにもなります。古書についての話も、それなりに楽しめます。饅頭本なる自費出版本の話が興味深い。

 

あらすじ

無名人の自費出版や百円均一台に埋まれた雑本の中に、思いもよらぬ珍本や奇本を見つけ出す、そんなビブリオマニアの密かな愉しみを語る第一部。「通とは、なんの役にもたたぬことを楽しむ心」道楽に生きた古今の通人達の名言を鑑賞した第二部。二宮金次郎が薪を背負いながら読みふけった本は何か――等々のエッセイを収める第三部。古書店主の蘊蓄がぎっしり詰まった本好きのための本。(作品紹介より)

 

古書店主のエッセイ

今回の作品は古書店を経営するかたわら小説を書き、直木賞も受賞した出久根達郎さんのエッセイです。初出は昭和60年代から平成元までとちょっと古いのですが、古書の専門家ならではのエッセイが読める作品です。

 

作品は大きく三つにのパートに分かれていて、友人達と買いあさった、百円均一の古本にまつわる話をまとめた第一部。江戸時代から戦前までの通人、道楽に生きた人々について語った第二部。二宮金次郎などについ語った第三部から成ります。

 

通人

『古書法楽』というタイトルからして、第一部の古本にまつわる話が、この作品のメインといえるのですが、私が一番印象に残ったのは第二部の通人たちのエッセイです。このブログでも先日紹介した岡本綺堂さんをはじめ、淡島寒月、斉藤緑雨、平賀源内などなど有名、無名の通人を30人近く紹介しています。

 

ちなみに通人とは、「すいも甘いもかみわけた人生の達観者(P112)」のことですが、遊びや芸事に精通した人たちぐらいに理解していればいい気がします。そんな通人たちの破天荒で粋な人たちの生涯は、私たちの生きるヒントにもなったり、ならなかったり。

 

例えば紀伊国屋書店の創業者・田辺茂一さんは親の金で二十四歳にして二百人以上の芸妓と遊んだという、ちょっとどうしようもない道楽者です。そんな田辺さんは本も大好きで、今の相場で三十万近い金額を中学生の頃から毎月本に(当然親の金で)使っていたそうです。

 

そんな田辺さんは、二十二才のときに本屋に丁稚奉公しますが、たった半日でやめてしまいます。半日の奉公で本屋のシステムを理解して、即刻、本屋を開業したそうです。

 

他には、月給四十五円の時代に、二千円以上の借金をした内田百閒や、偉大な芸術家ですですが、家族や使用人を奴隷のように扱った北大路魯山人(『美味しんぼ』の初期の頃の海原雄山をさらにひどくした感じ)などなど、生きるヒントになるかどうかはともかく、印象的な人たちが紹介されています。

 

百円文庫

第一部は主に古書の話ですが、その中でも百円で買えてしまうような本の話です。例えば「饅頭本」なる本。葬式などで配られる故人の遺稿集や追悼文集のことなのですが、単品としては素人の文集なので面白くないのですが、何冊かまとめて読み比べてみると、いろいろ面白そうです。

 

他には、戦時下に犬や猫をどのように扱ったかなど興味深い話が結構ありました。おそらく、昭和4、50年代に百円で買った古本なので、今とは違ってかなり個性的なラインナップで、いろいろと楽しめました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

今から20年以上前のエッセイなのでいろいろ不安でしたが、思った以上に楽しめました。ただ、うんちくを期待するのは微妙です。

 

直木賞受賞作品の『佃島ふたり書房』にも期待ができそうってことで、星三つです。

作家別索引

エッセイの他の作品

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