おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ふがいない僕は空を見た』 窪美澄 R-18文学賞

   

書評的な読書感想文361 おすすめ度☆☆☆☆

『ふがいない僕は空を見た』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

窪美澄(作家別索引

新潮文庫 2012年10月

R-18 青春(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

それぞれに闇を抱える五人の主人公の葛藤や成長を性と生を核に描いた作品。高校生から見たらしっかりしている大人でも、心の内に迷いを抱えているのが印象的。上手く伝えられないのがもどかしいのですが、とても良い作品。

 

あらすじ

高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが――。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。R‐18文学賞大賞、山本周五郎賞W受賞作。(作品紹介より)

 

女による女のためのR-18文学賞&山本周五郎賞受賞作品

今回の作品は、第8回「女による女のためのR-18文学賞」の大賞を受賞した「ミクマリ」という短編と、「ミクマリ」の主人公・斉藤の周辺の人物4人をそれぞれ主人公にした4本の短編をまとめた連作短編集です。

 

「女による女のためのR-18文学賞」とは文字通り女性のための文学賞で、応募は女性限定、予備選考をする編集者も女性、最終選考をする審査員も、女性作家という文学賞です。また、第1回から10回までの募集テーマは「性をテーマにした小説」(現在は「女性ならではの感性を生かした小説」)で、今回の作品にも官能的な表現が見られます。

 

5本の短編をまとめた『ふがいない僕は空を見た』という作品では、池井戸潤さんの『下町ロケット』などを抑えて第24回の山本周五郎賞を受賞しています。

 

五人の闇、性と生

物語は5本の短編からなり、5人の主人公がいます。年上の主婦とコスプレセックスをする高校生。姑に不妊治療をせまられ、ストレスで高校生との不倫に走る主婦。新興宗教にはまる兄を持ち、自暴自棄のまま処女を捨てようとする女子高生。ぼけた祖母と暮らし、将来が見えない高校生。母子家庭の母親で、過去にいくつもの後悔を抱える女性。

 

それぞれが何らかの闇を抱える主人公の葛藤と成長が描かれています。そして、その物語の核になるのが、性と生です。物語の中で、「性欲というやっかいで小さなたまご(P146)」なんて表現される「性」に振り回される高校生やその「性」の先にある「生」、妊娠と出産に向わざるえない大人たちが描かれています。

 

成長する高校生と迷う大人

どの主人公も自己中心的で、自分勝手で読んでいて嫌悪感を抱くこともあります。その一方でその勝手さにとても共感できたりします。

 

そんな主人公たちですが、5人のうち3人は高校生で、残りの2人が大人です。高校生の視点では凄くしっかりしているように見える大人が、別の章で主人公になったときに、内面に迷いや葛藤を抱えていたり、凄く自分勝手だったりするのが印象的です。また、高校生たちは抱える問題に答えらしきものを見つけて成長するのに対し、大人は迷いを抱えたままなのも意味深です。

 

書評的な読書感想文のまとめ

ストーリーよりも人を描いた作品で、この良さを上手く伝えられるだけの言語の能力が自分にはないのがもどかしいです。

 

ただ、読み終わった後、この作者の違う作品も読もうとすぐに思ったくらいとても良い作品ってことで、星四つです。

作家別索引

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