おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『蜘蛛の夢』 岡本綺堂 戦前のミステリー作品

   

書評的な読書感想文360 おすすめ度☆☆☆

『蜘蛛の夢』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

岡本綺堂(作家別索引

光文社時代小説文庫 1990年4月(このブログの画像等は新装版のものです。)

ミステリー 時代(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

戦前のミステリー短編集ですが、読みにくさを感じることなく楽しめました。すっきりしない結末の物もありますが、人間の執念を描いたサスペンスや怪談めいたミステリーが秀逸です。次は怪談を読みます。

 

あらすじ

小さな蜘蛛の咬み合いが、多くの人々を狂わせる(「蜘蛛の夢」)、釣った魚の腹から出た封筒の女文字が、男女変死の謎にからむ(「有喜世新聞の話」)――今なお古くならない綺堂作品には、貴重な風俗資料が一杯。(十二編)(作品紹介より)

 

『半七捕物帳』の作者の短編集

今回の作品は、『半七捕物帳』や怪談で有名な岡本綺堂さんの短編集です。『半七捕物帳』といえば、時代小説と探偵小説を融合させた「捕物帳」の一番初めの作品で、これ以降、『銭形平次捕物控』など様々な作家が「捕物帳」を描きます。また、ドラマや歌舞伎、落語などで上演された人気作品です。

 

そんな岡本綺堂さんですが怪談でも有名な方です。私も何かの小説のあとがきで、「玉藻の前」という作品がが凄く怖いと知ってから、岡本綺堂さんに興味を持ちました。

 

下に詳しく書きますが、実は今作は、『半七捕物帳』シリーズでも怪談でもないので、次はぜひ怪談を読もうと思っています。

 

戦前のミステリー短編集

今作は岡本さんの代表作の一つ『青蛙堂鬼談』のスピンオフ的な作品です。そもそも『青蛙堂鬼談』とは、青蛙堂という屋敷に人々が集まり怪談を披露する、いわゆる百物語の形式で書かれている作品です。

 

今作もその形式は踏襲されていますが、披露される話は怪談ではなく探偵談になっています。とはいっても、本格的なミステリーではなく、結末がすっきりしない物もあったりします。江戸から明治初期を舞台にした、怪奇ミステリー、怪奇サスペンスの短編集という言い方が一番しっくりくるでしょう

 

「捕物帳」や怪談、ミステリーとエンターテイメント作品を多く書いている岡本さんは、明治末から昭和初期まで活躍した作家さんです。この作品の解説で都筑道夫さんが言っていますが、戦前のエンタメ作品で現代でも読まれている物は多くないそうです

 

確かに、漱石をはじめ文学作品はいくらでも読まれていますが、エンタメ作品だと江戸川乱歩や吉川英治など数人しかいません。そんな中でも岡本さんの作品が今でも読まれるのは、時代を感じさせない普遍性と平易で読みやすい文章を持っているからと言えそうです。

 

今回も大正から昭和初期に発表された作品で多少古めかしい雰囲気は漂っていますが、表現などで引っかかることもなく、すらすらと読むことができました。

 

人間の執念

今回の短編の中でも印象に残った作品は、人間の執念を描いたサスペンスです。「穴」という作品は、明治初期、広大な庭を持つ武家屋敷を買い取った主人公一家ですが、手入れの手が回らす庭の大部分をほったらかしにしていました。

 

するとその背丈ほどもある雑草が生い茂った庭から、夜な夜ながさがさと物音がします。不審に思ったその家の主が庭を調べてみると、人がすっぽり入るような穴がいくつも掘ってありました。何のためにその穴が掘られいているのかが、物語の肝になるのですが、ミステリーで話を盛り上げつつ、人間の執念の浅ましさが描かれていて印象に残りました。

 

他には、陸軍の大尉が軍の火薬庫に忍び込もうとして殺され、その遺体がしばらくすると狐になっていたというミステリー、「火薬庫」も印象的です。意外な結末でミステリーとして面白い上に、全体に怪談めいた雰囲気が漂っているのが印象的でした。

 

書評的な読書感想文のまとめ

戦前の作品ですが想像以上に楽しめました。ミステリーだけでなく、怪談めいた話も面白かったので、次回は『青蛙堂鬼談』を読んでみたいと思いました。

 

ただ、すっきりしない結末もあったりするので、おすすめ度は控えめの星三つです。

作家別索引

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