おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『銀行総務特命』 池井戸潤 ドラマ『花咲舞が黙ってない』のストーリー原作

   

書評的な読書感想文358 おすすめ度☆☆☆☆

『新装版 銀行総務特命』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

池井戸潤【池井戸潤さんの他の作品】(作家別索引

講談社文庫 2011年11月

経済 ミステリー(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

銀行の不祥事をテーマにしたミステリーの連作短編集。心情への踏み込みが浅く、長編のようなカタルシスはないが、これはこれで面白い。色んな不祥事があるもんだと、逆に感心しながら読みました。

 

あらすじ

帝都銀行で唯一、行内の不祥事処理を任された指宿修平。顧客名簿流出、現役行員のAV出演疑惑、幹部の裏金づくり……スキャンダルに事欠かない伏魔殿を指宿は奔走する。腐敗した組織が、ある罠を用意しているとも知らずに――「総務特命担当者」の運命はいかに!?意外な仕掛けに唸らされる傑作ミステリー。(作品紹介より)

 

『花咲舞が黙ってない』のストーリー原作

今回の作品は、『オレたちバブル入行組』など半沢シリーズや2018年に映画が公開される『空飛ぶタイヤ』の作者、池井戸潤さんの作品です。

 

池井戸さんといえば半沢シリーズのほかに、杏さん主演のドラマ『花咲舞が黙ってない』も有名ですが、今回の作品のエピソードの一部がドラマの原作になっています(登場人物は全く別で、物語の筋だけが使われています)。

 

銀行の不祥事をテーマにしたミステリーの連作短編集

今回の作品を一文で紹介すると「銀行の不祥事をテーマにしたミステリーの連作短編集」といえます。銀行の総務課に所属する主人公の指宿修平が、銀行内の不祥事を調査、解明する物語で、主に不祥事や不正の方法(一般的なミステリーで言うところのトリック)に焦点を当てた短編集です。

 

不祥事や不正の方法自体に焦点を当てているので、登場人物の心情への踏み込みは浅く、物語への感情移入度は低めです。そのため『オレたちバブル入行組』などの長編のような、ためにためたフラストレーションを一気に開放するカタルシスはありません。

 

ただ、色んな不祥事があるもんだと、逆に感心しながら読むことができ、長編とは楽しみ方が違いますがこれはこれでかなり面白い作品です。

 

不祥事の種類

作品の中に出てくる不祥事の種類をいくつか紹介します(ネタバレならないように肝心な部分はぼかしますが)。

 

「ペイオフの罠」ではその章のタイトルからも分かる様に、ペイオフを利用した不正です。ペイオフとはものすごく大まかに言うと銀行が破綻したときに預金が1000万円までしか保証されない制度のこと。物語ではこの制度を利用した大胆な不正が描かれています。

 

他には顧客データの流失や裏金、はては行員のAV出演疑惑まで取り上げています。どの話にも不祥事の裏には、私欲に満ちた不正が隠れていて、それを主人公の指宿が暴き出します。

 

書評的な読書感想文のまとめ

作者はデビュー当初、銀行の内幕を描いた「銀行ミステリー」というレッテルを作品に貼られることが多かったそうです。読者もエンタメというよりは、企業小説として読んでいたようです。

 

そんな状況で、池井戸さんはエンターテイメントとして単純に楽しんでもらいたいという思いが強くなり、読者が感情移入できる生きている人物を描くことを目標に作品を書きたそうです。その結果が半沢シリーズや直木賞受賞作の『下町ロケット』につながります。

 

今回の作品は、初期の頃に書かれた「銀行ミステリー」そのものです。ただ、「銀行ミステリー」が面白くないのかといえば決してそんなことはなく、人間を描いた長編の物語は違った楽しみ方ができます。面白さの質は違えど、その度合いは他の作品に引けをとらないってことで、おすすめ度は星四つです。

池井戸潤さんの他の作品

作家別索引

経済の他の作品

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆☆ , ,