おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『エイジ』 重松清 同級生は通り魔

   

書評的な読書感想文351 おすすめ度☆☆☆

『エイジ』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

重松清【重松清さんの他の作品】(作家別索引

新潮文庫 2004年7月

青春 友情(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

同級生が通り魔だったという事件を通して、動揺しながらも大人へと成長する、中二の男の子の物語。主人公の成長の過程や事件についての友人たちとの対比の描写が見所。また、日常の描写がリアルで懐かしく思えました。

 

あらすじ

くの名はエイジ。東京郊外・桜ヶ丘ニュータウンにある中学の二年生。その夏、町には連続通り魔事件が発生して、犯行は次第にエスカレートし、ついに捕まった犯人は、同級生だった―。その日から、何かがわからなくなった。ぼくもいつか「キレて」しまうんだろうか?……家族や友だち、好きになった女子への思いに揺られながら成長する少年のリアルな日常。山本周五郎賞受賞作。(作品紹介より)

 

『流星ワゴン』の作者の山本周五郎賞受賞作

今回の作品は、以前紹介した直木賞受賞作品の『ビタミンF』やドラマで有名な『流星ワゴン』の作者、重松清さんの山本周五郎賞受賞作品です。

 

物語の主人公は、東京の郊外のニュータウンに住む中学二年生のエイジ。そんなエイジが恋をしたり、部活で挫折を味わったり、友達がいじめられているのに気付いてしまったりといった、中学生らしい日常が描かれています。

 

好きな子ができたのをきっかけに学校生活が楽しくなったり、友達がいじめにあっているのに、助けることはダサくて、友達もそれを望まないと考えてしまう心情などがとてもリアルで懐かしく読めました。

 

ただ、日常はクラスメイトが通り魔で捕まってしまうことで変化します。クラスメートが通り魔だったという出来事を通して、動揺し、考え、成長するエイジの姿が描かれています。

 

成長と対比

物語の最大の見所は、通り魔がクラスメートだったという事件を通して、成長する主人公の姿だと思います。通り魔事件の犯人について、何も知らなかったときに主人公は、犯人に対して

むかつかないのに殴る。なに?それ。見ず知らずってことは、自分とはぜんぜん無関係ってことで、好きとか嫌いとかもなくて、そんな人をいきなり殴る?

頭おかしいんじゃねーの?あんた(P28)

なんて、感情を持っています。まあ、とてもありふれた考えかなと思います。言葉が乱暴ですが。

 

そんな主人公が物語の終盤ではかなり違った考え方をしています。

バカじゃないかとも思っていた。いまは違う。そういうのも「あり」なんだと、わかる。(P356)

かなり劇的な変化なのですが、その過程がしっかり描かれていて、とても共感できました。

 

物語のもう一つの見所は、主人公と友達との事件へのリアクションの対比です。主人公のエイジは犯人のクラスメートに深く感情移入します。そのせいで、悩んだり苦しんだりもしますが、大きく成長もします。

 

また、エイジの友達でちょっとやんちゃな男の子、ツカちゃんは被害者に感情移入します。その結果、母親や周りの人間との関係が変化し、やんちゃ少年から脱却するきっかけになったりします。もう一人、クラスの秀才少年タモツ君は誰にも感情移入せずに、事件を客観視します。大人びた言動でクラスメイトから一目置かれていますが、上の二人とちがってあまり成長は見られません。

 

事件に対するリアクションは三者三様で、それぞれを比べることで、少年が大人に成長する過程をより立体的に見ることができました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

主人公が少年から大人になる過程を描いた成長物語といえる今回の作品。友達との対比が秀逸なのと、日常の描写がリアルで懐かしいです。ただ、作者がこの作品の兄弟のような関係とおっしゃる作品『ナイフ』までは読まないかなってことで、おすすめ度は控えめの星三つです。

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