おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ナポレオン狂』 阿刀田高 奇妙な味

   

書評的な読書感想文350 おすすめ度☆☆☆☆

『ナポレオン狂』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

阿刀田高(作家別索引

講談社文庫 1982年7月

ミステリー ホラー(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

ラスト数行で世界がガラッとかわる、切れ味鋭い短編集。驚きの結末なのに、伏線のおかげで納得できるのが凄いです。ブラックな物が多いのですが、その中でも人間の狂気を描いたホラーな作品が秀逸です。

 

あらすじ

自らナポレオンの生まれ変りと信じ切っている男、はたまたナポレオンの遺品を完璧にそろえたいコレクター。その両者を引き合わせた結果とは?ダール、スレッサーに匹敵する短篇小説の名手が、卓抜の切れ味を発揮した直木賞受賞の傑作集。第32回日本推理作家協会賞受賞の「来訪者」も収録する。(作品紹介より)

 

短編小説の名手、「奇妙な味」の直木賞受賞作品

今回の作品は、短編やショートショートの名手、阿刀田高さんの直木賞受賞作品。この作品集には13の短編が収録されていて、読んでいて真っ先に思ったのは、以前紹介した『エヌ氏の遊園地』の星新一さんに似ているところがあるなということ。

 

ブラックユーモアやラスト数行で世界がガラッと変わる驚きの結末など、共通するところがありました。それもそのはずで、星新一さんが選考する「星新一ショートショート・コンテスト」をその死後、阿刀田さんが選考を務めるなど、星さんの死後の第一人者として活躍しました。

 

もちろん全く同じかというとそんなことはなく、二人の作品を一冊ずつしか読んでいませんが、私なりに考えるお二人の違いは、星さんが現象を捉えた話が多いのに対し、阿刀田さんのほうが人物の心情にかかわる話が多い気がしました。

 

また、阿刀田さんは「奇妙な味」の短編でも知られます。

奇妙な味とは本来は探偵小説や推理小説のうちの「変格ミステリ」と呼ばれた作品の一部であった。江戸川乱歩の造語で、ミステリーともSFとも、また怪奇小説ともつかない特異な作風を指す。論理的な謎解きに主眼を置かず、ストーリー展開及びキャラクターが異様であり、読後に無気味な割り切れなさを残す点に特色があり、短編作品でその本領が発揮されることが多い。」(ウィキペディアより)

今回の作品のなかにも、「奇妙な味」と呼べそうな作品がいくつかありました。

 

「ナポレオン狂」

13の短編の中で特に気に入った作品を紹介します。まずは、表題作の「ナポレオン狂」。ナポレオン関連のものなら全て収集したい男とナポレオンにそっくりで、自分はナポレオンの生まれ変わりだと信じる男が出会ったときに物語。

 

ブラックというよりも人間の狂気を描いたホラーとも言える作品で面白いです。短く無駄がない文章の中にいくつもの伏線が仕込まれていて、意外な結末に驚きながらも納得ができます。

 

「恋は思案の外」

「恋は思案の外」は金を使い込んだ娘のために誘拐事件を起して金を工面しようとする男の話で、私が一番気に入った作品。意外な方法でお金の受け渡しをするアイディアがすごいのと、哀愁すら漂うようなラストが秀逸です。

 

ただ、ブラックユーモア度は低めです。

 

「白い歯」

「白い歯」は「歯がいいと頭がよくなる」という理論を信じている、妊娠した女の話。これもラストで狂気が描かれる作品です。

 

話の筋やオチが面白いのはもちろんなのですが、女の人物造形が秀逸です。

たしかに頭のわるい女ではない。IQもきっと高いだろう。だが、ほんの少しどこかが普通の人と違っている。(P219)

こんな風に表現される、女の性格の奇妙さがラストのオチに生きてきます。このフリがあるからこそ、最後の狂気のラストに納得がいきます。

 

書評的な読書感想文のまとめ

星真一さんの紹介で「好き嫌いが別れそうな作家さんですが、本好きなら一度は読んでみるべきです。」と書きましたが、阿刀田高さんも一度は手にとって見るべき作家さんだと思います(短編で読みやすいという意味でも)。

 

ラスト数行で世界がガラッとかわる驚きを味わってほしいってことで、おすすめ度は星四つです。

作家別索引

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