おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『吉原御免状』 隆慶一郎 隆テイスト満載

   

書評的な読書感想文347 おすすめ度☆☆☆☆

『吉原御免状』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

隆慶一郎【隆慶一郎さんの他の作品】(作家別索引

新潮文庫 1989年9月

時代 バトル(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

隆テイスト満載の良作。これから隆慶一郎さんを読もうとしている人や時代小説に飽きた人におすすめ。裏柳生との戦い、吉原成立の秘密、徳川の裏歴史、想像力をかき立てられ、ワクワクする要素でいっぱいです。

 

あらすじ

宮本武蔵に育てられた青年剣士・松永誠一郎は、師の遺言に従い江戸・吉原に赴く。だが、その地に着くや否や、八方からの夥しい殺気が彼を取り囲んだ。吉原には裏柳生の忍びの群れが跳梁していたのだ。彼らの狙う「神君御免状」とは何か。武蔵はなぜ彼を、この色里へ送ったのか。――吉原成立の秘話、徳川家康影武者説をも織り込んで縦横無尽に展開する、大型剣豪作家初の長編小説。(作品紹介より)

 

隆慶一郎テイスト満載

毎度おなじみ、「今好きな作家で打線を組んでみた」で八番に入っている隆慶一郎さんのデビュー作。物語は宮本武蔵に育てられた青年剣士の主人公・松永誠一郎が、吉原を訪ねるところからはじまります。「神君御免状」なる謎の書き付けを狙う、裏柳生の忍びと、あるきっかけで吉原を率いることになった誠一郎の対決を描いています。

 

とにかく、隆慶一郎さんの作品に良く出てくるテイストが満載の作品です。例えば、主人公の誠一郎は清々しく魅力的な人物で、男にも女にも好かれます。これは後の『一夢庵風流記』『死ぬことと見つけたり』の主人公とも共通するものがあります。一言で言うなら「男」ではなく「漢」です。

 

吉原を付けねらう裏柳生の忍びの集団との戦闘シーンは、突飛なアイディアにあふれ、それでいて豪快です。他の作家さんでは見ることのできないこれらの戦闘シーンは、後の作品の『鬼麿斬人剣』などにも見られます。

 

この作品から全ての隆慶一郎作品が派生したのではないかと思えるど、隆テイストにあふれているので、隆慶一郎さんを初めて読んでみようと思っている人におすすめです。

 

「道々の輩」と「裏歴史」

上にも書いたように、隆さんの特色の多くを兼ね備えている作品ですが、これ以外にも隆作品のキーワードが二つ、しっかりと描かれています。それが、「道々の輩」と「裏歴史」です。

 

「道々の輩」とは農民のように一つの土地に固定されずに、全国を自由に歩きまわって生活をしている人々のことで、鍛冶や大工などの職人、猿楽や白拍子なので芸能民、僧侶などです。隆さんの多くの作品に登場し、幕府や大名など公権力に対抗する力になります。

 

今作でも、舞台となる吉原成立の秘密と「神君御免状」なる書き付けの謎を解く鍵になるのが「道々の輩」です。江戸幕府ができ、さまざまな制度が整備され、「道々の輩」のような自由民が生きにくい世の中が出来上がる過程で吉原は誕生します。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、一般に考えられている吉原とは別の吉原像が描かれています。

 

また、従来の歴史を全く別の視点から解釈し直した「裏歴史」も隆作品のキーワードです。徳川家康は関が原で死亡していて、後の家康は影武者だという考え方もこの作品で語られていて、それが後の『影武者徳川家康』になっています。

 

どちらも独特の視点なのでありきたりの時代物に飽きた人にも、今回の作品はおすすめです。

 

書評的な読書感想文のまとめ

隆慶一郎のエッセンスがすべて入っていて、想像力をかき立て、ワクワクする要素もたくさんあるこの作品。隆ファンはもちろん、初めて読む人やありきたりな時代物に飽きている人にもおすすめってことで、星四つです。

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