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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『作家の収支』 森博嗣 興味がある人にはかなりおすすめ

   

書評的な読書感想文346 おすすめ度☆☆☆☆

『作家の収支』(新書)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

森博嗣【森博嗣さんの作品】(作家別索引

幻冬舎新書 2015年11月

ノンフィクション 経済(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

作家の収支について具体的な数字を出して語っていて、興味がある人にはかなりおすすめ。原作小説の売れ行きを連ドラと二時間ドラマで比較している話が印象的でした。また、森博嗣の独特な作家論も面白い。

 

あらすじ

1996年38歳のとき僕は小説家になった。作家になる前は国立大学の工学部助教授で、月々の手取りは45万円だった。以来19年間に280冊の本を出したが、いまだミリオンセラの経験はなく一番売れたデビュー作『すべてがFになる』でさえ累計78万部だ。ベストセラ作家と呼ばれたこともあるが、これといった大ヒット作もないから本来ひじょうにマイナな作家である――総発行部数1400万部、総収入15億円。人気作家が印税、原稿料から原作料、その他雑収入まで客観的事実のみを作品ごと赤裸々に明示した、掟破りで驚愕かつ究極の、作家自身による経営学。(作品紹介より)

 

原稿料と印税

今回の作品はこのブログには珍しく新書です。以前紹介した『すべてはFになる』のS&Mシリーズや『黒猫の三角』などVシリーズの作者、森博嗣さんがタイトルずばり「作家の収支」について語っています。ごりごりにお金の話をしていますが、具体的な数字やデータを使って淡々と作家の収支について語っているので、鼻につく印象は全くありません。

 

第一章では「原稿料と印税」について語っています。作家の収入の大部分を占める(と思われていますが、真実はちょっと違うようです。そんなことも本書には書いてあります)ので、全体の四割以上のページ数を割いています。

 

原稿料の相場から、印税率、解説の原稿料や入試問題に使われたときの使用料などについて書かれています。『すべてがFになるが』何冊売れて、いくら稼ぎ出したのかばっちり書いてあったりもします。

 

その中で私が一番印象に残ったのはお金の話ではなく、作家として「最も大切なことは、多作であること、そして〆切に遅れないこと。(P72、73)」と言い切っていることです。純粋に仕事として作家をしてる森さんらしい言葉だと思いました。

 

その他の雑収入

第二章では「原稿料と印税」以外の収入について語っています。講演やインタビューなどの相場についても語っていますが、この章の最大の見所は映像化したときの影響をいろいろ検証しているところです。

 

連続ドラマになったS&Mシリーズと単発2時間ドラマになった『黒猫の三角』を比較しているのですが、個人的にはこの作品の中で一番印象的に残った部分です。原作使用料の相場や、映像化によって売れた印税などを計算して、それぞれのドラマの影響力を検証しています。

 

また、押尾学監督でアニメ映画化した『スカイ・クロラ』についても同様の検証をしています。ちなみにこの作品について森さんは

『スカイ・クロラ』を書いたときには、自分ではこれが限界だと感じた。つまり、これ以上のものは書けないだろうという意味で、最高傑作だと確信した。

なんて言っています。

 

作家の支出、これからの出版

第三章では「作家の支出」、第四章では「これからの出版」について語っています。「作家の支出」については、森さんが取材や資料集めをほとんどしないで小説を書いているので、あまり参考になりません。ただ、経費で買うと実質50%引きで買えるという考えが、ちょっと面白かったです。

 

「これからの出版」の章では、今後の出版界、今後の作家、電子書籍などについて語られています。2年前の作品ということもあってか、それほど目新しいことは書いてありません。

 

ただ、この章には森さんの小説に対する考え方が書いてあって興味深いです。スランプについて

この仕事がさほど好きではないし、人に自慢できる価値があるとも認識していない。スランプにならないのは、このためだと思われる。(P196、197)

なんて、身も蓋もないことを書いていますが、森さんの作家としての特徴を現している文章だと思います。

 

書評的な読書感想文のまとめ

私はお金の話が好きなのでかなり面白く読めました。元理系の先生だけあって数字を使って理路整然と語っているのも好印象です。なので、この手の話に興味がある人には、かなりおすすめってことで、星四つです。

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