おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『手紙』 東野圭吾 強盗殺人犯の弟

   

書評的な読書感想文341 おすすめ度☆☆☆☆☆

『手紙』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆☆【東野圭吾さんの他の作品】(星数別索引&説明

東野圭吾(作家別索引

文春文庫 2006年10月

家族 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

凄い作品。犯罪者の弟として差別に苦しむ主人公に生き方を示唆する、ある人物の言葉がとても印象的。この部分だけでこの本を読む価値があります。また、いろいろな立場から犯罪者の家族や差別について考えさせられます

 

あらすじ

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く……。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。(作品紹介より)

 

ガリレオシリーズの作者の問題作

今作の作者はドラマや映画でもおなじみ、ガリレオシリーズの東野圭吾さんです。ガリレオシリーズといえば『容疑者Xの献身』が有名ですが、個人的には『聖女の救済』のほうがおすすめです。犯人の執念とトリックがマッチしているのが秀逸です。

 

そして、今作はその『聖女の救済』と同じくおすすめ度星五つの問題作です。物語の主人公は両親を亡くし、兄と二人暮らしの高校生です。その兄が強盗殺人事件を起してしまうところから物語ははじまります。

 

一人残された主人公は、懸命に生きる道を探します。しかし、進学、恋愛、就職とあらゆる場面で「強盗殺人犯の弟」ということが足かせになり、主人公の行く手を阻みます。犯罪加害者の家族の運命を描いたかなり重い話になっています。

 

ただし、そこは東野圭吾さん。物語の重さ、テーマの深さに反してするすると読めるのもこの作品の凄いところです。

 

犯罪者の家族とは?差別とは?

あらゆる場面で、犯罪者の弟として苦しむ主人公を見ていて私は二つのことを思いました。

 

一つ目は自分が主人公と同じ立場ならどうするかということです。親が犯罪を起したら。兄が犯罪を起したら。自分の家族に当てはめて考えると、なかなか答えが出ません。正直、主人公のような過酷な状況に陥ってしまったら、早々に縁を切ってしまうかもしれないと思ってしまいました。

 

二つ目は私の周り(友人や職場の同僚)に主人公のような人がいたらどうするかです。作品の中で、主人公はこんなことを考えています。

直貴(管理人註:主人公のこと)に幸せになってほしいと思っている。たが自分は関わりたくないのだ。誰か別の人間が助けてやればいいのに――それが本音なのだ。(P173)

たぶん私は上のように考えてしまいます。むしろ、もっと積極的に離れて行くかもしれません。犯罪者の兄とその弟は、全くの別人格で、兄が犯罪を起しても弟が犯罪を起すとは限らない(「起さない」ではないのがポイント)のは分かっていますが。

 

犯罪者の家族とは?差別とは?考えさせられます。

 

「差別はね、当然なんだよ」

物語の最大の見せ場は、主人公の直貴と職場の社長の対話の場面です。さまざまな差別に苦しむ主人公に、この社長が生きる指針を示すのですが、この社長とのやり取りだけでもこの作品を読む価値があるかなと私は思います。その社長のセリフがこちら

「差別はね、当然なんだよ」(P317)

さらにはこんなことも言います。

「(管理人:略)もう少し踏み込んだ言い方をすれば、我々は君のことを差別しなきゃならないんだ。自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになる――すべての犯罪者にそう思い知らせるためにもね」(P319)

実際に彼は主人公を周囲とあまり関わる必要のない部署に異動させます。

 

現実的で容赦のない言動をしますが、一方で主人公にアドバイスを送っています。物語を読む楽しみを殺いでしまうので、その社長がなんと言って、主人公はどうしたかはここには書きませんが、犯罪者の家族の一つの生き方が示されています。

 

書評的な読書感想文のまとめ

凄い作品というのが一番の感想。そして、その凄い作品を、エンターテイメントに昇華してあるのがさらに凄いです。色々考えさせられる重い話なのにするする読めるってことで、おすすめ度は最高評価の星五つです。

東野圭吾さんの他の作品

作家別索引

家族の他の作品

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆☆☆ , ,