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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『希土類少女』 青柳碧人 レアアース・ガール

   

書評的な読書感想文340 おすすめ度☆☆☆

『希土類少女(レアアース・ガール)』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

青柳碧人【青柳碧人さんの他の作品】(作家別索引

講談社文庫 2015年4月

SF 恋愛(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

SF+恋愛。恋愛の障害が権力というパターンで、私はバッドエンドだと思うのですが、ハッピーエンドと読む人も。レアメタルを生み出す少女という設定は面白いので、社会的影響とかディテールを詰めて欲しかった。

 

あらすじ

高純度のレアメタルを生成する能力を持つ冴矢。症状が発見された少女は、産業を潤わせる一方、長くても25歳までしか生きられない。そんな絶望的な日常は江波との出会いで変わり始めるが、やがて二人はコミュニティの命運を左右する決断を迫られるのだった。苛酷な宿命に立ち向かう少女の、儚く美しいSF長編。(作品紹介より)

 

レアメタル生成症候群

今回の作品は毎度お馴染み「今好きな作家で打線を組んでみた」で投手陣の抑えにいる青柳碧人の作品です。

 

とりあえず気になるのは、物語のタイトルになっている「希土類=レアアース」。「レアアース」とは数十種類ある「レアメタル」の一部のことです。では、「レアメタル」とはなにかというと、産出量が少ない希少な金属のことで携帯電話やパソコン、自動車などの製造に不可欠な素材です。産出国がとても偏っているため輸入に頼らざるを得ない日本としては、産出国の価格条件を受け入れるしかないとても不利な状況に置かれています。

 

そんな状況の中、物語ではヒロインの冴矢をはじめ、一部の少女たちが「レアメタル生成症候群」を発症します。これは、13、14~25才までの少女が発症する病気で、体の一部で定期的に高純度のレアメタルが生成されます。

 

輸入に頼っていた日本の産業を潤す一方で、彼女たちは塀で囲まれた施設に集められ、厳重な監視の下での生活を余儀なくされます。その上、この病気の少女は25歳までしか生きられません。

 

そんな施設の生活の中で冴矢と、少女たちが住む施設で働く物語の主人公の江波が出会うことで、運命の歯車が回りだします。

 

バッドエンドかハッピーエンドか

物語の展開はありがちといって良いかもしれません。禁じられた恋があって、二人の恋や自由と国家の利益が対立する悲劇です。作中でも「国家に囚われた愛する少女との、たった二人の逃亡劇(P240)」なんて表現されています。

 

結末に関しては当然ここでは語れませんが、私がイメージする青柳さんの作品とはちょっと違っていて、国家権力の身勝手で卑怯なところがある、なかなか黒い結末になっています。私としては完全にバットエンドと受け取りました。

 

ただ、ネットで他の人の意見を見てみると、悲しいけれどもハッピーエンドと解釈した人もいてかなり意外でした。実際にどちらなのかは読んで確かめてみてほしいところです。

 

SFとして突き詰めて欲しかったかも

物語の舞台は現代の日本です。ただ、現実世界とは違い、「レアメタル生成症候群」という病気が発症し、行き詰った日本の産業界を救う少女たちがいます。

 

個人的にはこの設定はとても面白いと思いました。面白いと思ったゆえに、もう少しこの設定で日本がどうなるのか細かいところまで突き詰めて書いてほしいとも思いました。もちろん、この物語のテーマは恋愛で、ページ数的にも細かいところまで描くことができないことはわかります。

 

ただ、生死にかかわるほど切羽詰ってない状況ですが、この少女たちで確実に日本は潤います。というか、贅沢できます。そして、彼女たちの寿命は25歳までに尽きます。といった状況で、日本という国は少女たちの自由と人権と自分たちの贅沢を天秤に乗せてどう振舞うのか、作家さんの想像力でシミュレートして欲しいかったかなと思いました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

恋愛物としてありがちですが、設定が面白いこの作品。ラノベよりの娯楽小説です。ただ、ラストの解釈が人によって変わることもある、幅の広い作品ってことで、おすすめ度は星三つです。

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