おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『血と骨』 梁石日(ヤンソギル) 戦前、戦後の在日朝鮮人

   

書評的な読書感想文337

『血と骨上・下』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

梁石日(作家別索引

幻冬舎文庫 2001年4月

家族 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

凶暴で、強欲で、極めて自己中心的な在日朝鮮人が主人公。嫌悪感さえ抱かせる人物が主人公なのに、なぜか最後までぐいぐいと読ませるパワーのある小説。また、戦前戦後の在日朝鮮人コミュニティの描写が興味深い。

 

あらすじ

一九三〇年頃、大阪の蒲鉾工場で働く金俊平は、その巨漢と凶暴さで極道からも恐れられていた。女郎の八重を身請けした金俊平は彼女に逃げられ、自棄になり、職場もかわる。さらに飲み屋を営む子連れの英姫を凌辱し、強引に結婚し……。実在の父親をモデルにしたひとりの業深き男の激烈な死闘と数奇な運命を描く衝激のベストセラー!(上巻作品紹介より)

 

在日文学の山本周五郎賞受賞作品

今回の作品はビートたけしさん主演で映画にもなった、ある在日朝鮮人の栄光と挫折を描いた半生記です。主人公の生き様を描いているとともに、1930年代~1970年代ごろの在日朝鮮人コミュニティの様子も描かれています。

 

主人公についてあとがきでその人物像に書かれているのちょっと長いですが引用します。

一時はかまぼこ職人をしていた二メートル近い巨体、げてもの食いで人の三倍もの食欲、情慾の化身、つねにベルトの後ろに差しこんだ桜の棍棒、やくざとやり合う場合の刃除けのさらしを巻いた背中にぐるぐる巻きつける鉄の鎖を、何十年間着用し続けた古毛皮の半コートのポケットに忍ばせ、相手がどてっ腹に突き刺した匕首の刃を素手で摑んで引き抜きながら、棍棒で相手の頭を叩き潰す男。ケンカ相手の耳を嚙みちぎって呑みこんでしまう男。毎日大酒を飲んで家族を虐待し、家財道具を破壊して外へ放り出して荒れ狂う。長屋の二階に妻や小学生の兄妹がいるのに、階下で毎日白昼から新しい妾を連れこんで声を上げながらの同衾。「血は母より、骨は父より受け継ぐ」、「おまえはわしの骨」だと叫びながら、その肉親に一片の愛情もなく、後日かまぼこ工場の経営で巨万の富を得ながら、家族にはビタ一文を使わず、妻の英姫を病死させる徹底した自己中心主義。どす黒い凶暴な感情の塊の存在(P469,470)

嫌悪感を通り越して吐き気さえ催すような人物が主人公なのに、ぐいぐいと読ませるパワーを持った作品。最後にはこの主人公に同情さえしてしまいました。

 

戦前、戦後の在日朝鮮人

物語は舞台は1930年代~1970年代ごろの大阪の在日朝鮮人が多く住むエリアです。場末の長屋に住み、貧しいが力を合わせて生きる在日朝鮮人のコミュニティの様子が描かれています。

 

在日朝鮮人職工だけを狙った、不当な解雇の問題。それに対していまいちまとまりきれない朝鮮人。そこに近づく共産党員、ヤクザ、警察などなど。ひとつの時代を空気を在日朝鮮人のフィルターを通して眺めると、色々興味深いことが見えてきます。

 

書評的な読書感想文のまとめ

かなりパワーのある作品で、主人公のキャラがひどいにもかかわらず最後まで読むことができました。在日朝鮮人のコミュニティの様子もかなり興味深いものです。

 

ただ、上に書いたようなもろもろのことに興味のない人にまでおすすめかというとそうでもないので、おすすめ度は星三つです。

作家別索引

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