おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『国境事変』 誉田哲也 「ジウ」シリーズの東警部補

   

書評的な読書感想文334 おすすめ度☆☆☆☆

『国境事変』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

誉田哲也【誉田哲也さんの他の作品】(作家別索引

中公文庫 2010年6月

警察 サスペンス(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

公安の捜査のえぐさと公安になりきれない捜査員の心情の揺らぎが見所。その捜査員と信念を貫く刑事との対比も面白い。また、北朝鮮を中心とした社会情勢を反映した、スパイ小説のようなスリリングな展開も秀逸です。

 

あらすじ

新宿で在日朝鮮人が殺害された。“G4”の存在を隠匿しようとする公安は独自捜査を開始するが、捜査一課の東警部補は不審な人脈を探り始める。刑事と公安、決して交わるはずのない男達は激しくぶつかりながらも、国家と人命の危機を察し、銃声轟く国境の島・対馬へと向かう――警察官の矜持と信念を描く、渾身の長篇小説。(作品紹介より)

 

「ジウ」シリーズのスピンオフ

今回の作品は、以前紹介した『ジウ 警視庁特殊捜査係【SIT】』などの「ジウ」シリーズで主人公の一人、門倉美咲の相棒だった、東警部補が主人公のいわばスピンオフ作品です。

 

「ジウ」シリーズで起きた「歌舞伎町封鎖事件」の二年後の物語で、メインは主人公の東が歌舞伎町で起きた殺人事件の裏に隠された真相に迫る話になっています。

 

ただ、東とは別に公安警察もその殺人事件に関係しています。北朝鮮関連の事件の一環で、その際の公安警察の捜査の様子が詳細に描かれていて、公安警察の物語としてもこの作品を読むことができます。さらには、北朝鮮を中心とした当時の交錯情勢を反映した、国際的なスパイ物という側面もあります。

 

公安のえぐさと、公安になりきれない男

上に書いたようにいくつかの見方ができる物語ですが、私は公安警察の捜査方法とその捜査員の葛藤の物語が一番印象にに残りました。

 

公安警察とは国家の安定と秩序を守る警察で、物語の中の公安捜査員たちは北朝鮮関連の捜査をしているのですが、この公安の捜査の方法がなかなかえぐいです。情報収集が第一義なので、違法捜査は当たり前、目の前で犯罪行為が行われても見逃したりします。

 

当然、一般の刑事事件を追いかけている刑事警察とは折り合いが悪いです。刑事である主人公の東は一本気な性格で、場合によっては目の前の被害者を見殺しにするような公安警察とは敵対し、公安警察の犯罪行為を告発しようとしたりもします。それに対する公安警察の嫌がらせはかなり悪辣で、嫌悪感すら覚えます。

 

一方で、そういったやり方に疑問を持つ捜査員もいます。そんな捜査員が一本気な性格をした東と出会い感化され、公安としての役割と警察としての矜持の間で葛藤する姿もこの物語の見所のひとつと言えます。

 

北朝鮮を中心とした社会情勢

物語のキーワードのひとつとして北朝鮮問題が挙げられます。金正日時代の古い話なので今とはかなり事情は違いますが、北朝鮮を中心とした社会情勢が物語に反映されています。

 

在日朝鮮人の北朝鮮への送金問題や核開発の問題などが取り上げられていて、当然、公安警察や主人公の東も北朝鮮を中心とした渦に巻き込まれます。各国の工作員が絡むスパイ小説のようなスリリングな攻防もあり、物語の見所のひとつになっています。

 

書評的な読書感想文のまとめ

「ジウ」シリーズのスピンオフ作品として本作を読み始めましたが、公安警察の捜査のえぐさやスパイ小説のようなスリリングな展開に「ジウ」シリーズのことは忘れて、夢中で読みふけっていました。

 

「ジウ」とは違った魅力があって面白いってことで、おすすめ度は星四つです。

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