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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『山妣(やまはは)』 坂東眞砂子 山姥が出てきます

   

書評的な読書感想文326

『山妣 上・下』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

坂東眞砂子(作家別索引

新潮文庫 2000年1月

家族 時代(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

山姥が物語の軸になっているのが面白い。舞台となっている時代に取り残された山里や閉山間際の鉱山の描写がリアルで、そこに住む人々の閉塞感とたくましさが上手く描かれています。ただ、ラストのまとめ方が残念。

 

あらすじ

明治末期、文明開化の波も遠い越後の山里。小正月と山神への奉納芝居の準備で活気づく村に、芝居指南のため、東京から旅芸人が招かれる。不毛の肉体を持て余す美貌の役者・涼之助と、雪に閉ざされた村の暮らしに倦いている地主の家の嫁・てる。二人の密通が序曲となり、悲劇の幕が開いた――人間の業が生みだす壮絶な運命を未曾有の濃密さで描き、伝奇小説の枠を破った直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

日本の風俗を題材にしたホラーで有名な作者の直木賞受賞作

映画にもなった『死国』や『狗神』など日本古来の土着の風俗を題材にしたホラー小説で有名な坂東眞砂子さんの直木賞受賞作。

 

今作では山姥の生涯が物語の軸になっていて、山姥の正体に一定の説明を付けているのが興味深いです。また、山姥の生涯を描くことによって、その周辺にいる人々の愛憎をあぶり出しているのがこの物語の見所です。

 

時代に取り残された山里と閉山間際の鉱山

物語の舞台は明治時代末期の文明開化の波から取り残された山里とすべてを取り付くした閉山間際の鉱山が舞台です。封建制度が色濃く残った山里の描写や閉山間際の鉱山を遊郭の遊女の視点から見た描写がとてもリアルで、実際にその場に立っているような迫力を感じました。

 

また、地主と小作農、山師と鉱山町の遊郭の遊女と立場は違えどそれぞれが先の見えない閉塞感を感じていて、息が詰まるようでした。一方で、奉納芝居で山里が沸きたったり、ある方法で遊女が足抜けを試みようとしたりと、そこに住む人たちのたくましさなども描かれています。

 

文化の中心である江戸や東京の華やかな様子や、活気がある鉱山を舞台にした物語も面白いと思いますが、今作のような派手さのない、一見して物語の舞台には相応しくない場所が描かれている作品も面白く読めました。

 

愛憎劇の行く末

物語は最終章で大きく動き出します。山姥を中心としてさまざまな人間関係が絡み合い、人間の業が生み出す愛憎劇が繰り広げられ、ぐいぐいと物語に引き込まれました。

 

ただ、最終章ではあまりにも都合よく登場人物が配置されるので、ちょっとだけしらけてしまう部分がありました。個人的にはまとまりがない、もう少し突き放した結末のほうが良かったかなと思います。

 

書評的な読書感想文のまとめ

物語の舞台になっている山里や鉱山とそこに住む人々の暮らしや人間関係の描写だけでも読む価値のある作品かなって思いました。後半になるにつれぐいぐいと引き込まれ楽しく読めましたが、ラストのまとめ方がちょっとご都合主義過ぎて残念って事でおすすめ度は星三つです。

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