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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『一九三四年冬―乱歩』 久世光彦 作中作「梔子姫」

   

書評的な読書感想文325

『一九三四年冬―乱歩』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

久世光彦(作家別索引

新潮文庫 1997年2月(ブログの画像等は創元推理文庫版のものです)

サスペンス ミステリー(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

意外に小心な乱歩の造形や終盤の乱歩の現実と夢と作品世界が一体化したかのような展開が秀逸。ただ、作中作の「梔子姫」は、乱歩の特徴を捉えた幻想的で妖艶な作品ですが、ねっとりした変態性が足りないのが残念。

 

あらすじ

昭和九年冬、江戸川乱歩はスランプに陥り、麻布の〈張ホテル〉に身を隠した。時に乱歩四十歳。滞在中の探偵小説マニアの人妻や、謎めいた美貌の中国人青年に心乱されながらも、乱歩はこの世のものとは思えぬエロティシズムにあふれた短編「梔子姫」を書き始めた――。乱歩以上に乱歩らしく濃密で妖しい作中作を織り込み、昭和初期の時代の匂いをリアルに描いた山本周五郎賞受賞作。(作品紹介より)

 

テレビドラマのプロデューサーとして名を馳せた作者の山本周五郎賞受賞作

作者の久世光彦さんは、元はTBSでドラマの演出やプロデューサーをやっていて、1970年代を代表するドラマプロデューサーです。代表作は『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』などがあります。TBS退社後は独立しドラマの演出など行っていて、乱歩の『D坂の殺人事件』のドラマ化作品なども手がけています。

 

今回の作品の作中作である「梔子姫」は、幻想的な映像が思い描ける作品になっていて(映像化は大人の事情で無理でしょうけど)、元ドラマプロデューサーらしい作品なのかなって思います。

 

スランプ中の乱歩

物語の主人公は江戸川乱歩。以前紹介した『パノラマ島奇談』や『盲獣』の作者でいわずと知れたミステリー作家の巨星です。そんな乱歩がスランプに陥り、とあるホテルに身を隠していたときの出来事を描いたのが今回の物語です。

 

仁丹やミナト式の鼻通しを愛用し、風呂に入るのが大好きな乱歩。意外と小心で地震が起きてうろたえる乱歩など、綿密な取材の基に書かれていて、実際に見てきたのではないかと思えるほどリアルな乱歩の造形が物語の見所の一つです。

 

また、乱歩はサインを求められると「うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと」と書いていたそうですが、この言葉そのままの、夢と現実と作品世界(作中作「梔子姫」の世界)が一体化したかのような終盤の展開もかなり面白いです。

 

「梔子姫」

編集者から逃げてきてホテルに身を潜めている乱歩ですが、滞在中に一つの作品を書きます。それが「梔子姫(管理人註:くちなしひめ)」です。

 

資産家の主人公の男性と怪しげな私娼窟の娼婦の恋愛物語で、その娼婦は幼い頃から特別なお酢を飲まされていて異常なほど体が柔らかいという設定です。

 

もちろん実在の乱歩の作品ではなく、久世さんが乱歩を真似して書いた作品ですが、幻想的で妖艶な作品で、直木賞や山本周五郎賞の選評で乱歩より巧い、乱歩より乱歩らしいといわれた作品です。

 

ただ、個人的には(つい最近まともに乱歩の作品を読んだばかりの私がいうの何なんですが)、ちょっと上品過ぎるというか、ねっとりとした変態性が足りてないような気がして残念でした。

 

書評的な読書感想文のまとめ

私のようなにわかは置いておいて、熱狂的な乱歩ファンの人はこの作品をどう評価するのか気になるところです。やっぱり認めがたいのでしょうか。個人的には乱歩の造形が面白し、「梔子姫」もちょっと物足りないけど楽しめた、ってことでおすすめ度は星三つです。

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