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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『闇の守り人』 上橋菜穂子 過去との決着

   

書評的な読書感想文322

『闇の守り人』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

上橋菜穂子【上橋菜穂子さんの他の作品】(作家別索引

レーベル 2007年7月

ファンタジー 冒険(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

主人公のバルサが過去に決着をつける物語。主人公だからといって単に正義の味方ではなく、悪感情も持っていることで物語にリアリティと深みが出ています。前作同様の冒険物のワクワク感や緻密な世界観もあり楽しめました

 

あらすじ

女用心棒バルサは、25年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた。おのれの人生のすべてを捨てて自分を守り育ててくれた、養父ジグロの汚名を晴らすために。短槍に刻まれた模様を頼りに、雪の峰々の底に広がる洞窟を抜けていく彼女を出迎えたのは――。バルサの帰郷は、山国の底に潜んでいた闇を目覚めさせる。壮大なスケールで語られる魂の物語。読む者の心を深く揺さぶるシリーズ第2弾。(作品紹介より)

 

守り人シリーズ第二弾

『鹿の王』で2015年に本屋大賞を受賞した上橋菜穂子さんの代表作である『精霊の守り人』の続編で、いわゆる「守り人」シリーズの第二弾です。ただ、前作を読んでいなくても今作を楽しめるつくりになっているので、今作を先に読んでも問題ないです。

 

このシリーズはもともと児童文学のレーベルである偕成社から出版された異世界を舞台にした冒険ファンタジーシリーズですが、王位継承にまつわる陰謀などビターなテーマを扱っていたり、文化人類学者でもある作者の知識を生かした緻密な世界観の物語で大人でも十分に楽しめる作品になっています。

 

物語の舞台は(あくまで私が読み取ったところでは)日本に似た国の弥生時代から飛鳥時代の間ぐらい文明度になっていて、今作ではバルサの故郷の北国(北海道風?)が舞台です。

 

主人公だって悪感情

今作は主人公のバルサが生まれ故郷に25年ぶりに戻るとこからはじまります。

 

25年前にバルサの父親は王位継承を巡る陰謀に巻き込まれてしまい、六歳の娘のバルサにも命の危険が迫ります。そこで、バルサの父親は親友のジグロにバルサを連れて国外に逃亡するように頼みます。ジグロは迫りくる追っ手を次々と倒しながら、バルサを育てます。

 

その後、バルサは一人前の用心棒に成長し、ジグロは亡くなります。今回、バルサが故郷に戻ってきたのは、裏切り者の汚名を負ったジグロの名誉を回復し、バルサの心の奥に暗い影を落とす過去と決別するためです。

 

バルサは故郷の国に対して

(なんのりっぱな理由もない。わたしはただ、自分の痛みを返したいだけなんだ。)(P181)

と、意外なほどストレートに負の感情を表現しています。また、バルサの養父のジグロにしても今回の物語の中で負の内面をさらけ出しています。

 

主人公は善玉で、父のかたきの敵は悪玉であるという構図ははっきりしているのですが、味方サイドの内面にある悪感情についてもしっかり描写いています。

 

主人公が勧善懲悪的な世界観の単なる正義の味方ではないところに、物語としてのリアリティーと深みを感じましたし、この作品が前作以上に大人の読者の支持を得ている理由になっています。

 

ワクワク感と世界観

今作も前作同様、冒険物のワクワク感と緻密な世界観があります。主人公が国境を抜けるのにつかった秘密の洞窟を通るときや妖精たちの住みかに進入したときなどは、冒険物に必須なドキドキワクワク感を感じることができました。

 

また、今作の舞台になっている北国特有の食べ物(じゃがいもみたいなものか?)や市場の様子などとても緻密でリアルに描かれています。妖精の生き物が出てくるファンタジーですが、思いのほかリアリティーを感じて読むことができました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

第二弾も読んでよかったな、というのが一番の感想。ワクワク感とリアリティーのある物語の世界観も素晴らしいのですが、素直な負の感情を見せる主人公やその仲間たちに親近感を抱くことができ、楽しく読むことができまた。次回作も楽しみだなってことで、おすすめ度は星四つです。

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