おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『盲獣』 江戸川乱歩 作者も吐き気を催す「完全版」

   

書評的な読書感想文321

『盲獣』(文庫)

おすすめ度☆(ジョーカー的な意味で)(星数別索引&説明

江戸川乱歩【江戸川乱歩さんの他の作品】(作家別索引

創元推理文庫 1996年2月

ホラー サスペンス(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

完全版「盲獣」が目的で購入。作者さえ吐き気を催すために削除された章は、さすがに悪趣味でグロい。懸賞金付き推理小説「地獄風景」は勢いは良いのですが、推理小説としては問題なのと劣化版「パノラマ島奇談」なのが残念。

 

あらすじ

本名不明、年齢不詳、住所不定、通称《盲獣》。狙い定めた女をさらい、意のままに弄んだ後は何の未練も執着もさらりと捨てて黄泉路へ送る、冷酷非情なその手口。あわれ飛んで火に入るレビューガール、カフェのマダムか有閑未亡人……足の向くまま気の向くまま、悪逆無道の限りを尽くす男を描いたクライム・ストーリー。犯人当て懸賞の趣向が凝らされた「地獄風景」を同時収録。(作品紹介より)

 

『盲獣』作者も吐き気を催す完全版

盲目の男が次々と殺人を犯す物語『盲獣』。この話、以前パノラマ島奇談(「盲獣」「偉大なる夢」)』で紹介していて、

盲目の主人公が自分のために作った奇妙でグロテスクな触角の部屋の描写や女性を次々惨殺するエロティックでグロテスクな描写はインパクト絶大です。猟奇的でグロい描写が苦手な人は絶対に読まないほうがいいでしょう。

 

乱歩自身はこの作品はあまり気に入らなかったようですが、乱歩のど変態ぶりが垣間見れます。

なんて感想を書きました。

 

では、一度読んだものを今回なんでわざわざ紹介するかというと以下の理由があります。桃源社版の全集を出版する際に、乱歩が『盲獣』を読み直して

ひどい変態ものである。私の作がエログロといわれ、探偵小説を毒するものと非難されたのは、こういう作があるからだと思う。この作は全集に入れたくなかったが、しかし、そんなことをいって、気に入らぬ作を省いていたら、半分以上なくなってしまい、全集の意味を失うことになる。作者自身が校訂などやると、こういうときに困るのである。だから、目をつむってのせることにしたが、終わりの方の「鎌倉ハム大安売り」という章だけは、作者の私が吐き気を催すほどなので、この一章、原稿紙にして八、九枚は、削らせてもらって、辻褄が合うように前後の文章を直した。御諒承ください。(P353)

などと言って、一部を削除してしまいました。私が読んだバージョンもこの削除版でした。

 

ただ、「作者の私が吐き気を催すほど」の部分を含めた「完全版」が読みたくて、「完全版」を収録している創元推理文庫版を購入。今回、紹介することになりました。

 

で、読んだ感想なのですが、さすがに悪趣味でグロいです。乱歩が隠したいと思う部分には、乱歩の本性が隠れているのかなと思って読みましたが、ただただ悪趣味なだけでした。

 

「鎌倉ハム大安売り」なんてタイトルからも分かるとおもいますが、人によっては肉やハムがおいしく食べられなくなる可能性があります。

 

「地獄風景」

今作に収録されているもう一つの中篇「地獄風景」。平凡社版の全集の付録雑誌に連載された「全集読者へのサーヴィス(P354)」として書かれた作品で、読者に犯人を当てさせる懸賞小説です。

 

その内容は、勢いがあって面白いのですが、応募総数27238のなかで正解が24196とちょっと簡単すぎる上に、推理小説としては問題がありそうなのと劣化版「パノラマ島奇談」なのが残念です。

 

パノラマ島奇談」を読めばこちらはあえて読む必要を感じませんでした。

 

書評的な読書感想文のまとめ

さすがの乱歩ですら吐き気を催す作品なので、とてもではありませんが万人におすすめはできません。ただ、覚悟の上で読めば楽しめる作品でもある、ってことでおすすめ度はジョーカー的な星一つです。

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