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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『錯乱』 池波正太郎 六度目の正直

   

書評的な読書感想文319

『錯乱』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

池波正太郎(作家別索引

春陽文庫 1996年5月

時代 サスペンス(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

面白い。表題作は、陰謀、策略渦巻くやりとりも、隠密として屈折した生き方をする主人公も秀逸すぎで、短編だけど中身が濃い濃い。他の短編も相反する感情に苦悩する主人公の姿が丁寧に描かれていて、さすがの面白さです。

 

あらすじ

信州松代十万石の藩士堀平五郎は、武骨だが諸事円満な性情で、将棋の駒づくりを唯一の趣味にする、妻女久仁との間には息子がひとりという平凡な人好きのする人物であった!藩祖真田信之にも好かれていたが、一大事が出来した!現藩主の信政が卒倒し、城下は騒然となった!卒倒三日後、信政は没した!死の床にあって信政を悩ましたのは、暴君型の甥、分家の信利の存在であった!はたして愛児への家督は無事に許されるのか……!?。堀平五郎の目は異様な鋭い光を放っていた!?(「錯乱」)――第四十三回直木賞受賞作「錯乱」の他、百姓娘に欲情した信州上田藩士を描く「碁盤の首」、松代藩内抗争事件を描く「刺客」、夜ごと男女交合秘図描きに没頭する火付盗賊改めを描く「秘図」、そして薩摩藩の暴れ者中村半次郎を描く「賊将」の四編を収めた傑作短編集!(作品紹介より)

 

『鬼平犯科帳』『剣客商売』の作者の直木賞受賞作

『鬼平犯科帳』『剣客商売』など時代小説のシリーズで有名な池波正太郎さんの直木賞受賞作の「錯乱」を含む五つの短編を収めた作品。意外にも池波さんがこの「錯乱」で直木賞を受賞したのは実に六回目の挑戦の末で、努力賞的な意味合いがあるなんて言い方もされてしまっています。

 

ただ、個人的にはこの「錯乱」は面白かったです。

 

舞台は信州松代藩。藩主の真田信政が死亡し、藩主の甥で暴君の信利か幼い藩主の息子か。松代藩内部にとどまらず、幕府の老中などの思惑も絡み合って事態は不透明な状態へ。そんななか、

勝負事のうえで、勝っても負けて、平五郎ほどの快いあと味を残してくれるものは藩中にもいまい。だれもかも、平五郎と(管理人註:将棋の)盤を囲むことを好んだ。(P3)

なんていわれるほどの好人物である、主人公の堀平五郎が暗躍し始めます。

 

陰謀、策略渦巻き、裏の裏を取り合うような両陣営のやり取りと幕府の隠密として松代藩に潜入している、平五郎の屈折した生き方が見所です。特に、隠密としての生き方に疑問を持ちつつも、隠密として生きていかざるおえない平五郎の矛盾した胸のうちが秀逸です。

 

「刺客」

印象に残った作品をもう一つ紹介します。こちらも信州松代藩が舞台。藩政を意のままに操って私服を肥やす執政の原八郎五郎。その原の重大な秘密を握った反対派は、江戸の藩邸に密書を送ろうとしていました。その密使を切るために刺客として放たれたのが、主人公の虎之助です。

 

原がのさばる事が松代藩にとって悪いことであるのは承知しながらも、自暴自棄になっていたところを拾われた恩義から原と行動を共にする虎之助の葛藤がこの物語の見所です。

 

自暴自棄になった原因である幼なじみとの破談など、過去の因縁が明らかになりつつ、揺れ動く虎之助の心情が描かれていてとても楽しめました。ラストのまとめ方もとても印象的です。

 

書評的な読書感想文のまとめ

短編集全体のテーマというほど堅苦しいものではありませんが、上記以外にもこの短編を原案に後に『おとこの秘図』として長編小説化された「秘図」など、相反する感情に苦悩する主人公の姿が丁寧に描かれている作品があり、そのどれもがとても面白かったです。

 

名前だけは知って今いたが、今回初めて読んだ池波正太郎さん。時代小説の大家として期待に違わぬさすがの面白さがありました、ということでおすすめ度は星四つで。

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