おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『誰かが足りない』 宮下奈都 予約の取れない店

   

書評的な読書感想文317

『誰かが足りない』(文庫)

おすすめ度☆☆(星数別索引&説明

宮下奈都【宮下奈都さんの他の作品】(作家別索引

双葉文庫 2014年10月

人間ドラマ 料理(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

何かが「足りない」人が一歩を踏み出す、がテーマの連作短編集。いくつか印象に残った短編はありますが、連作として全体を通したテーマはいまいちピンとこないというのが正直な感想。引きこもりの青年の話がお気に入り。

 

あらすじ

おいしいと評判のレストラン「ハライ」に、同じ時に訪れた6組の客の物語。仕事に納得がいっていない。認知症の症状がではじめた。ビデオを撮っていないと部屋の外に出られない。人の失敗の匂いをかぎとってしまう――「足りない」を抱える事情はさまざまだが、前を向いて一歩踏み出そうとする時、おいしい料理とともに始めたい。決心までの心の裡を丁寧に掬いあげ、本屋大賞にノミネートされた感動作。(作品紹介より)

 

何かが「足りない」人々

物語は六人の主人公の六つの短編からなる連作短編集です。六人の主人公たちはそれぞれ何かが「足りない」、つまり現状に問題を抱えている人たちです。

 

就職活動に失敗し、何とか入った会社の仕事に不信感を持つ男。

認知症が始まった老女。

係長という名の尻拭い要員になってしまった女。

ビデオを撮っていないと部屋の外にも出られない引きこもりの男。

客に恋をしている調理師の男。

人が放つ失敗をした臭いを嗅げてしまう女。

 

その何かが「足りない」人たちが、ちょっとだけ勇気を出して現状を打開する一歩を進める姿を描いたのが今回の物語です。そして、一歩を進めた人たちは記念に同じ日、同じ時間、同じ「ハライ」というレストランで記念の食事をすることになります。

 

引きこもりの男

六つの短編で一番気に入ったのは、ビデオを撮っていないと部屋の外にも出られない引きこもりの男の話です。

 

母親の死をきっかけに引きこもりなった男は、今度は姉の結婚を機にビデオを撮っていれば何とか部屋の外に出られるようになります。そして、妹の重荷にならないために何とか引きこもり生活から脱却しようと一歩を踏み出す物語です。

 

こうやってあらすじを書いてしまうとなんだか情けないだけの男のようですが、繊細で傷つきやすいながらも何とか家族のために前に進もうとする主人公に好感をもてました。また、脇役の妹やキーマンとなる妹友達も繊細で他人の痛みがわかるやさしさを持っているのが素敵です。

 

そして、読み終わった後には寒い雨の日に少しだけ日が差した時のような、少しだけ暖かい気持ちになれる作品です。

 

書評的な読書感想文のまとめ

引きこもりの男の話以外にも、認知症の老女と家族の交流を描いた話など印象に残る短編はありました。ただ、同じレストランに集まる人々を描いた連作短編集として作品全体を通じたテーマに関しては「誰かが足りない」というタイトルと考え合わせても、いまいちピンとこないところがありました。

 

足りないのは誰かではなく何かではとか思ってしまったり、短編ごとの話の重さの違いとかに違和感を感じてしまいました。連作短編集としてはチグハグな印象を感じてしまったので、おすすめ度は星二つです。

宮下奈都さんの他の作品

作家別索引

人間ドラマの他の作品

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆ , ,