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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『空飛ぶタイヤ』 池井戸潤 リコール隠し

   

書評的な読書感想文316

『空飛ぶタイヤ』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

池井戸潤【池井戸潤さんの他の作品】(作家別索引

講談社文庫 2009年9月

経済 お仕事(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

リコール隠しの実話を基にした話で、大企業の醜悪さが上手く描かれていて面白いです。理不尽に追いつめられる主人公の閉塞感が生々しく、読んでいて苦しくなりました。色々な立場の人の視点が描かれているのも秀逸です。

 

あらすじ

走行中のトレーラーのタイヤが外れて歩行者の母子を直撃した。ホープ自動車が出した「運送会社の整備不良」の結論に納得できない運送会社社長の赤松徳郎。真相を追及する赤松の前を塞ぐ大企業の論理。家族も周囲から孤立し、会社の経営も危機的状況下、絶望しかけた赤松に記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。(作品紹介より)

 

長瀬智也さん主演で2018年映画公開

下町ロケット』や半沢直輝シリーズの『オレたちバブル入行組』でおなじみの池井戸潤さんの作品。

 

数々の大ヒットドラマの原作になって池井戸さんですが、意外なことの映画の原作になるのは今作が初めてだそうです。主演は長瀬智也さんで2018年に公開予定です。

 

正義感が強く、熱い性格の主人公はイメージに長瀬さんはぴったりなので、映画のほうも楽しみです。【映画『空飛ぶタイヤ』公式サイト

 

三菱自動車リコール隠し事件

運転中のトレーラーから脱輪したタイヤが転がり、通行人に直撃する死亡事故から物語ははじまります。運送会社の整備不良を主張するメーカーの説明に納得のいかない、運送会社の社長で物語の主人公である赤松徳郎は、さまざまな妨害や周囲からの冷たい仕打ちに耐えながら事件の真相を解明していきます。

 

トレーラーから脱輪したタイヤが通行人に直撃する事件といわれてピンと来る人も居ると思いますが、この物語にはモデルになった実際の事件があります。2000年ごろに起きた一連の三菱自動車リコール隠し事件が下敷きになっていて、その事件を通して大企業や大手銀行の身勝手で顧客を無視した醜悪さが物語のなかで描かれています。

 

ただ一点だけ注意して欲しいのは、実際のリコール隠し事件を調べてしまうと物語のネタバレになってしまうので、調べるのは読み終わった後にしたほうが良いとうことです。

 

ただ、読み終わった後には、ぜひ三菱自動車リコール隠し事件について調べて欲しいかなと思います。なぜなら、現実は物語以上に厳しいことが分かるからです。

 

心が折れそうに

物語の前半はかなりストレスの溜まる展開です。主人公は自動車会社からは死亡事故の責任を押し付けられ、取引先からは冷たくあしらわれることになります。また、家族も周囲から孤立することになり、かなりしんどい状態が続きます。

 

あまりに重たい展開が続くので、主人公ともども心が折れそうになりました。最後には正義が勝つという池井戸さんの作風に対する信頼感がなければ、途中で読むのをやめていたかもしれません。

 

それくらい、理不尽に追い詰められる主人公の閉塞感が生々しく描かれているといえます。

 

脇役やサイドストーリーも秀逸

物語のメインストーリーは主人公の赤松と自動車会社の対決ですが、それ以外の脇役の視点から見た物語も秀逸です。問題の自動車会社のクレーム担当課長の沢田の視点や自動車会社と同じ財閥の銀行の融資担当の井崎の視点がそれです。

 

沢田の視点からは問題の自動車会社の内部ではどんなことが起きていたの、なかの人間は何を考えていたのかが読み取れます。また、井崎の視点では、事件が第三者にどう写るかが描かれています。

 

こういった脇役によるサイドストーリーあることで物語に立体感やリアリティを与えることになり、より深く物語を楽しめるようになっています。

 

書評的な読書感想文のまとめ

 

かなりのボリュームですし、前半は重い展開で読む手が鈍ることもありました。しかし、そこは池井戸さん最後はまちがいなくすっきりさせてくれますし、大企業ブランド信仰など考えさせられることもたくさんあるってことで、おすすめ度は星四つです。

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