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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『雨やどり』 半村良 どんな時代になっても読まれる作品

   

書評的な読書感想文314

『雨やどり』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

半村良(作家別索引

集英社文庫 1990年3月

人間ドラマ 人情 (ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

面白い。古き良き時代のなごりを残した新宿という舞台に、時代物を思わせる人情話が見事にマッチ。どの話にも哀愁や苦味、ユーモアなどが効いてる上に、エンタメ性もしっかりあります。どんな時代になっても読まれる作品です。

 

あらすじ

舞台は新宿裏通りのバー街。「ルヰ」のバーテンダー仙田を主人公に、彼の前を通り過ぎて行く、いろいろな男と女の哀歓漂う人間模様を描き出す連作。直木賞受賞の表題作をはじめ、「おさせ伝説」「ふたり」「新宿の名人」など八篇を収録。(作品紹介より)

 

戦国自衛隊の作者の直木賞受賞作品

何度も映画やドラマになった『戦国自衛隊』で有名な半村良さんの直木賞受賞作品です。

 

物語は新宿のバーテン、仙田を主人公にした連作短編集です。仙田は

いつでも相談に乗るから言って来なさい。……そんなことを言っても素直に相談に来はすまいが、仙田にはホステスたちが、ひょいと身の上について話しはじめてしまうようなところがあった。(P12,13)

こんな風に言われる、新宿のいわばまとめ役みたいなものです。

 

今作はそんな仙田を中心とした新宿を根城にする人たちの人間模様を切り取った物語になっています。

 

古き良き時代の新宿

物語の舞台は新宿と書きましたが、今の新宿ではなく、西口のビル群もまばらで、新宿にもかろうじでですが木造の建物が残っている時代の物語です。私が知っている新宿の前の前の前のさらに前くらいの新宿だと思うのですが、人情と猥雑さが入り混じった古き良き時代の新宿といった感じです。

 

バーやキャバレーの店主やホステスたちは多くが顔なじみで、客も多くが常連という世界。そこで繰り広げられる男女の物語や男の友情話などは、時代物の人情物語を彷彿とさせます。

 

また、どの短編にも哀愁や苦味、ユーモアがあってしみじみと面白いのですが、ちょっとだけ謎やサスペンスもあって十分なエンタメ性がありました。

 

「昔ごっこ」

一番印象に残った短編は「昔ごっこ」です。

 

新宿勃興期の風情を残した木造のキャバレー、「ゴールデン・ベア」。その店が関西の資本から回収をかけられますが、当然断ります。すると「ゴールデン・ベア」のすぐ隣に関西資本の店ができ、つぶしにかかってきます。そこで仙田たち新宿の仲間が力をあつめ店を昔の姿のままに盛り上げ、「ゴールデン・ベア」を救うというお話です。

 

昔の仲間が集まった店はお祭りのような熱気があり、今ではちょっと考えられないようなサービスもあるキャバレーで驚くほど盛り上がります。その一方で、物語のあちこちに、古き良き時代の新宿の終焉を感じさせる描写があったりもします。

 

勃興期の新宿の最後の灯火を見ているようで、楽しいのに切なくなる作品です。

 

書評的な読書感想文のまとめ

古き良き時代の名残を残した新宿を舞台にした人情物語。時代物の名作と同じように、文化や風習が現代とは違っていても、人情の機微にふれたこの作品は今後も読まれていくと思います。どんな時代になっても読まれる作品ってことで星四つです。

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