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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『キング誕生』 石田衣良 池袋ウエストゲートパーク青春篇

      2017/06/29

書評的な読書感想文312

『キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

石田衣良【石田衣良さんの他の作品】(作家別索引

文春文庫 2014年9月

ハードボイルド サスペンス(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

タカシがキングになった瞬間、「ぞわっ」とするものがありました。この一瞬の為だけに、この本を読む価値があるかなと。このシリーズのらしさもありつつ、長編で読み応えもあるのでファンなら必読の一冊です。

 

あらすじ

誰にだって忘れられない夏の一日があるよな――。高校時代のタカシには、たったひとりの兄タケルがいた。スナイパーのような鋭く正確な拳をもつタケルは、みなからボスと慕われ、戦国状態だった池袋をまとめていく。だが、そんな兄を悲劇が襲う。タカシが仇を討ち、氷のキングになるまでの特別書き下ろし長編。(作品紹介より)

 

タカシからキングへ

今作は毎度お馴染み「今好きな作家で打線を組んでみた」で一番に入っている石田衣良さんの代表作『池袋ウエストゲートパーク』シリーズの特別篇です。文庫書き下ろしで、このシリーズの最大の人気キャラクター、タカシがキングになるまでを描いた長編になっています。

 

物語の最大の見所はなんと言っても、タカシがキングになった瞬間ではないでしょうか。

 

物語はいつのも様に主人公のマコトの目を通して語られます。キングになる前のタカシがマコトとつるんで騒動を起す場面もファンにはたまらないと思いますが、マコトの目からみたキングの誕生の瞬間は、「ぞわっ」と鳥肌が立ちました。

 

キングになる前のタカシは甘さというか、高校生らしさが残っていて、キングであるタカシとのギャップに違和感がありました。もしかしたら甘さの残るタカシを見ないほうが良かったのかな、といった後悔も若干沸いていたので、余計にキング誕生の瞬間はインパクトがありました。この一瞬のためだけにこの本を読む価値があると思います。

 

また、マコトとタカシの友情秘話やマコトがGボーイズに決して入らない理由なんかも描かれているので、ファンなら絶対に読むべきです。

 

「らしさ」と「らしくなさ」

このシリーズの「らしさ」のひとつは、その時代をあらわす旬な社会問題を取り上げていることですが、今作では「オレオレ詐欺」がテーマになっています。「オレオレ詐欺」については、主人公のマコトがとても印象的なことを言っているので引用します。

ブラック企業は若いガキを低賃金でつかいつぶす。自分の遺伝子を未来に残す希望さえ捨てるくらいの低賃金で。ガキのなかのネジがはずれたはずれたやつらは、こんな世界へのしっぺ返しのつもりで、金をもった年よりをだます。世のなかなんて、結局すべてだましあいだと見切ったガキには、金にもなるし、いい仕事だろう。(P92,93)

主人公のマコトというか、この物語の考え方が凝縮されている良い文章かなって思います。

 

反対に「らしくなさ」として、今作は長編であることが挙げられます。いつもの社会問題をドカンと中心に据えた短編ではなく、タカシの変貌を物語の中心に据えた長編で、いつものシリーズにはない読み応えがあります。

 

書評的な読書感想文のまとめ

今作はタカシとマコトの物語なのですが、シリーズの意外な脇役が出てきています。一方で、個人的には期待していたあの人が出てこないのは残念でした。

 

ただ、このシリーズのファンなら絶対の楽しめるし、絶対に読むべきだと思います。その反面、当たり前ですがこのシリーズを知らない人がいきなりこの作品から読んでも楽しめないと思うので、おすすめ度は星三つにとどめておきます。

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