おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『六条御息所 源氏がたり』 林真理子 林版源氏物語

   

書評的な読書感想文310

『六条御息所 源氏がたり 上・下』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

林真理子【林真理子さんの他の作品】(作家別索引

レーベル 2016年9月

時代 恋愛(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

やっぱり源氏物語は面白い。女性たちの心理描写が秀逸で、林流の解釈に感心したり反発したり。また、昔は苦手だった、愛憎渦巻く後半が特に面白かったです。ただ、初見の人に林版がおすすめかというと迷うところ。

 

あらすじ

「今までと同じ『源氏物語』は絶対に書きたくなかった」恋愛小説の神様=林真理子が、世界的古典文学の傑作に、新解釈で挑んだ意欲作。生き霊となってさまよう六条御息所のひとり語りで進行する手法、衝撃的な書き出しに、雑誌『和樂』で発表されたときには大きな話題となった。次々に繰り広げられる光源氏を巡る性愛の数々。不倫、略奪、同性愛、ロリコン、熟女愛…。あらゆる恋愛の類型を現代的感覚で再構築し、詳細に心理描写を施した。原書の第一帖『桐壷』から第十三帖『明石』までを中心に描いた、若き光源氏のノンストップ恋愛大活劇!(上巻作品紹介より)

 

『源氏物語』って面白い

今回の作品は林真理子さんの新解釈による『源氏物語』です。『源氏物語』はご存知の方多いでしょうが、西暦1000年ごろ、平安時代に書かれた王朝文学のひとつで、主人公の光源氏が理想の女性を求めて、さまざまなタイプの女性と恋愛を繰り広げる物語です。

 

私は決して日本の古今の物語に精通しているわけではないのでえらそうなことは言えませんが、少なくとも私の中では日本文学史上の最高傑作は『源氏物語』だと思っています。

 

そんな『源氏物語』をコミカライズしたマンガ『あさきゆめみし』を紹介したときにも書きましたが、私は大学受験の浪人生時代に『あさきゆめみし』に出会い、『源氏物語』にはまりました。大学では近代文学を勉強しようと思っていたのですが、志望を変更して『源氏物語』で卒業論文を書きました。

 

なので、『源氏物語』に対する思い入れは強いので、今回の作品はかなり期待を持って読みました。そんな私が最初に抱いた感想は、『源氏物語』ってやっぱり面白いということです。林さんの新解釈や工夫を凝らした構成も見所ですが、そもそものベースになる『源氏物語』が面白いことを再確認しました。

 

林流に感心したり、反発したり

今回の作品を書く際に林さんはこんなことを考えたそうです。

「今さら私が全訳してもつまらないだろう」(管理人:中略)私がやるべきことは、『源氏物語』をいったん分解し、新解釈をし、再構築することではないか。(P487、488)

実際、全訳はせずにばっさり切るところは切っています。光源氏の恋愛をメインにしているので、子や孫(夕霧や宇治十帖)の話は丸々カットしています。

 

逆に、女性側の心情にはスポットを当て、原作以上に詳しく書いているとともに、今までの訳本にはあまりなかった新解釈も織り込んでします。例えば、光源氏の母親の人物像を今までのように単なる気弱な女性とは描いていません。光源氏の恋人夕顔の人物像も、原作とは違ってかなりしたたかな女性として描かれています。

 

そして、最大の特徴はタイトルにもあるように六条御息所を語り手にしているところです。六条御息所は光源氏の恋人で嫉妬あまり生霊や死霊になって光源氏の他の恋人たちに乗り移るという、物語の中でもかなり特異な性質をもった女性です。

 

彼女を語り手にすることで、光源氏の恋人たちの心情にスポットを当てることができていて、現代の感覚にマッチしている作品になっています。

 

個人的には、林版のちょっと女性たちが自立しすぎているというか、もっと流されて生きていたのかなって思ったりもしましたが、現代の感覚に即した女性の人物像にはおおむね好感を持って読めました。ただ、私が卒業論文でテーマにした夕霧と雲居の雁の恋の部分がカットされていたは残念です。

 

後半が面白い

学生時代は若い光源氏が、さまざまな人と恋愛をする前半部分が好きだったのですが、今回は今まで好きではなかった後半部分が面白く感じました。後半は光源氏が政治的には繁栄していくのに反して、女性たちとの関係は徐々に溝が深まり、愛憎渦巻く物語になっています。

 

男性としての輝きを失い、自分の子ども世代の人物に鼻面を引っ掻き回される光源氏が、正邪さまざなま感情を見せることで人間的に見え、共感と好感を持って読むことが出来ました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

『源氏物語』が私史上最高傑作であることが再確認できましたし、林さんのおかげで新しい見方をすることも出来ました。

 

ただ、新解釈や省略も多いので、『源氏物語』初挑戦の人におすすめかというと迷うところでもあるので、おすすめ度は星四つです。

林真理子さんの他の作品

作家別索引

時代の他の作品

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆☆ , ,