おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ダック・コール』 稲見一良 この本に出会えてよかった

   

書評的な読書感想文306

『ダック・コール』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

稲見一良(作家別索引

ハヤカワ文庫 1994年2月

人間ドラマ 冒険(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

これは面白い。鳥がキーアイテムの連作短編集で、犯人追跡などハードボイルドな物語から、友情や冒険がテーマのものまで読み味の異なる短編がどれも印象的です。こういう本に出会えるから山本周五郎賞巡りはやめられないです。

 

あらすじ

石に鳥の絵を描く不思議な男に河原で出会った青年は、微睡むうち鳥と男たちについての六つの夢を見る――。絶滅する鳥たち、少年のパチンコ名人と中年男の密猟の冒険、脱獄囚を追っての山中のマンハント、人と鳥と亀との漂流譚、デコイと少年の友情などを。ブラッドベリの『刺青の男』にヒントをえた、ハードボイルドと幻想が交差する異色作品集。“まれに見る美しさを持った小説”と絶賛された第四回山本周五郎賞受賞作。(作品紹介より)

 

鳥がテーマの山本周五郎賞受賞作品

ここ何ヶ月か、読書の幅を広げるために山本周五郎賞と直木賞の受賞作を読んでいるのですが、山本周五郎賞作品は読み終わって、良い読書をしたなと思える作品にしばしば出会えます。

 

以前紹介した『明日の記憶』や『砂のクロニクル』がそうなのですが、しっかりとしたテーマ性がありつつエンタメ性も保っていて、読みにくいことはないけど程ほどの読み応えが私の好みと合致しているのかなって思います。

 

今回の作品も上の二つと同じく、良い読書をしたと思える作品です。

 

鳥をテーマにした緩やかな連作短編集なので、ハードボイルド物から、冒険物、友情物など読み味の違う作品を楽しめます。ただ、どの作品も自然に対する畏怖と親しみ、人間に対する愛と優しさにあふれていてとても印象的です。

 

「密猟志願」

六つの短編の中で特に印象的なものを紹介します。一つ目は「密猟志願」。

 

パチンコなどを使った野鳥狩り名人の少年と、会社を辞めて暇をもてあました素人狩人の中年男性の友情物語。少年の師匠と中年の弟子が狩猟を通して友情を育むところも見所ですが、クライマックスは二人が小川が流れるような大きな庭を持つ豪邸に忍び込んで狩りをする場面です。

 

狩りをしているときに緊張感や成功したときの喜び、そして印象的なラストシーンと心が右へ左へと大きく揺さぶられました。

 

「ホイッパーウィル」

もう一つは「ホイッパーウィル」。舞台は戦後間もないアメリカの田舎町。主人公が町の保安官に協力して、刑務所を脱走して山に逃げ込んだ凶悪犯を追いかける物語。上の「密猟志願」とは打って変わってハードボイルドな仕上がりです。

 

血気盛んな若手保安官や老練で冷静なベテラン保安官、頭が切れてカリスマ性もある凶悪犯など個性豊かなキャラクターが魅力ですが、その中でも日系二世のアメリカ人で武士の魂を持った主人公のケンが一番魅力的です。

 

寡黙で男気にあふれ、銃の腕前も一流です。主人公と凶悪犯との銃撃戦は手に汗握りましたが、この主人公らしいやさしさのあふれラストシーンが一番印象的でした。

 

書評的な読書感想文のまとめ

いろいろな読み味の短編があるので、きっとお気に入りの短編が見つかると、自身を持っておすすめできる作品です。ただ、鳥嫌い、狩猟シーンが苦手という人を除けばですが。

 

良い読書が出来た、この本に出会えてよかったと素直に思えるってことでおすすめ度は星四つです。

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