おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『パレード』 吉田修一 シェアハウスの人間関係

   

書評的な読書感想文304

『パレード』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

吉田修一【吉田修一さんの他の作品】(作家別索引

幻冬舎文庫 2004年4月

友情 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

上辺だけで内面には踏み込まない、そんな若者たちの関係が軽やかに描かれていて楽しめます。ただし、それは最終章までのこと。賛否分かれそうなこの最終章、ある種の禍禍しさが表現されていて、個人的にはありです。

 

あらすじ

都内の2LDKマンションに暮らは男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め……。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。

 

シェアハウスを描いた山本周五郎賞受賞作品

悪人』や『怒り』など数々の作品が映画化している吉田修一さんの山本周五郎受賞作品。この作品を読み終わったときに、映像化したら面白そうだなって思っていたら、藤原竜也さん主演で映像化していました。機会があったら見てみようと思います。

 

また、吉田さんは山本周五郎賞を受賞した同じ年に芥川賞も受賞しており、大衆文学と純文学の賞を同年に受賞したってことで、話題になりました。

 

映像化作品も多いし、文学性とエンタメ性を高いレベルで兼ね備えた作家さんといえそうです。

 

若者の人間関係を軽やかに

物語の舞台は2LDKのマンション。ここにひょんなきっかけで住むことになった五人の男女の若者が物語の主人公です。五人の主人公のそれぞれの視点で語られる五つの章から物語が構成されていているのが特徴的です。

 

いわゆるシェアハウスに住む若者たちの人間関係が物語のテーマですが、

一緒に住んでいるとはいえ、琴ちゃんや未来、直輝さんの前でも、そんなおセンチで深刻な自分は見せたくない。それに、この部屋での、この共同生活は、そういったものを持ち込まないからこそ、成立しているんじゃないか、とも思う。話したいことではなく、話していいことだけを話しているから、こうやってうまく暮らせているのだと。(P37)

 

誰だって善意も悪意も持ち合わせている。たぶん未来にしろ、直輝くんや良介くんにしろ、ここでは善人の演技をしているのだと思う。まさにこれを「上辺だけの付き合い」と呼ぶのかもしれない。でも、私にはこれくらいが丁度いい。(P94)

といった風に各主人公が考えていて、内面には踏み込まない若者の人間関係が描かれています。

 

壊れかけたテレビをたたいて直すシーンや、マンションの隣の女子高生とおじさんが頻繁に出入りする怪しげな店に潜入するシーンなどちょっと笑える描写もあって、全体的に軽めの仕上がりになっています。

 

賛否両論の最終章

上にも書いたように今どきの若者の関係を描いた物語として十分面白ないなと思いつつ最終章まで読み進めたのですが、ここで物語の印象が大きく変わります。

 

川上弘美さんが書いた解説にしつこいほどに書いてありますが、最終章のネタが割れてしまうと物語の面白味は半減してしまうので詳しくは書きません。ただ、5人の今どきの人間関係には、ある種の禍々しさが潜んでいることが分かり背筋が寒くなりました。

 

山本周五郎賞の選評でも賛否が分かれた最終章ですが、今の時代の人間関係の裏を表現していると思うので、個人的にはありだと思います。

 

書評的な読書感想文のまとめ

シェアハウスの人間関係を描いた軽めの物語として十分面白い上に、衝撃的な最終章が人間関係の裏側を描いていてさらに面白いってことで、おすすめ度は星四つです。

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