おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『地下の鳩』 西加奈子 ありの~ままの~

   

書評的な読書感想文299

『地下の鳩』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

西加奈子(作家別索引

文春文庫 2014年6月

人間ドラマ 恋愛(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

ありのままの自分を受け入れることがテーマの、不思議と少しだけ前向きになれる作品。主人公が三人とも不器用だけど見栄っ張りでとても愛らしいのが印象的です。西加奈子さんの他の作品も読んでみたいです。

 

あらすじ

大阪最大の繁華街、ミナミのキャバレーで働く「吉田」は、素人臭さの残るスナックのチーママ「みさを」に出会い、惹かれていく(「地下の鳩」)。オカマバーを営む「ミミィ」はミナミの人々に慕われている。そのミミィがある夜、客に殴り掛かる(「タイムカプセル」)。賑やかな大阪を描いて人気の著者が、街の「夜の顔」に挑んだ異色作。(作品紹介より)

 

見栄っ張りの物語

先日紹介した『本日は、お日柄もよく』の原田マハさんと並び、以前から気になっていた作家・西加奈子さんの作品です。

 

今回の作品は二つの中編が収録されています。一つ目の作品は表題作「地下の鳩」。昔はもてたが今はそれほどでもない、キャバレーの呼び込みの四十男・吉田と素人臭さが残るのになぜかスナックのチーママを任されているみさをの二人が、出会い、惹かれあい、すれ違う物語。

 

二つ目は「タイムカプセル」。「地下の鳩」にも脇役として出てくるオカマバーのママ・ミミィが主人公。癖のある店員やお客に囲まれながらも夜の街でなんとか生きてきたミミィですが、とある客の出現で、ミミィや周りの人間の運命がちょっとづつ狂いだす物語。

 

吉田とみさをもミミィも、自分に自信がなく、その分ものすごくコンプレックスが強いキャラで不器用で見栄っ張りです。

吉田のイキり癖はみさをの前で本領を発揮、古いキャバレーで呼び込みをしているのは、後ろ暗い過去があってのこと、という態度を崩さなかった。俺は危険な男だ、野生的な魅力に溢れた、ミステリアスな男だと、みさをに思わせることに、吉田は全力を尽くした。(P73)

なんて描かれている吉田はちょっとめんどくさそうでもありますが、表面的な様子と内面が両方描かれているので、不器用だけど見栄っ張りで、ちょっぴり子どもっぽい愛らしいキャラクターに思えてきます。

 

同じようにみさをやミミィもコンプレックスを隠しつつ、肩肘張って生きている様子が描かれていて、とても愛着を感じれました。

 

不思議と前向きになれる作品

どちらの作品も物語の終盤で主人公が、弱さをさらけ出した本当の自分と向き合うことになります。本当の自分と向き合ったところでどうなるかは読んで確かめて欲しいのですが、「ありのままの自分を受け入れる」というのがこの物語のテーマなのかなって私は思いました。

 

愛らしいキャラクターたちが自分を受け入れる物語を読み終わると、自分のコンプレックスも受け入れることが出来るような気持ちになって、不思議とちょっとだけ前向きになっていました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

物語としては大きな盛り上がりに欠けるかもしれません。「地下の鳩」のラストシーンは最初は蛇足かなと思いましたが、しばらくすると味のあるラストに思えました。けれどやっぱり物語のラストとしてはちょっとふわっとしすぎかなとも思います。

 

ただ、読み終わって前向きな気持ちになれたし、西さんの他の作品にも興味がわいたってことで、おすすめ度は星三つです。

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